河北春秋

 福島県浪江町大堀に樹齢約800年のウラジロガシがある。持ち主の半谷秀辰さん(66)の家系はこの大木と同じぐらい歴史が古く、先祖は約330年前に陶器作りを始めた▼馬の絵を特徴にする陶器は大堀相馬焼として特産になった。存続の危機が訪れたのは2011年。東京電力福島第1原発事故による全町避難で大堀相馬焼協同組合の組合員は散り散りになった。理事長だった半谷さんは伝統を絶やすまいと奔走した▼原発事故からきょうで8年半。この間、新天地で再建した窯元がある一方、廃業した人もいた。半谷さんが頼りにした組合員2人は60代で亡くなった。「原発事故のストレスがあったと思う。本当に大堀相馬焼を愛した人たちだった」▼帰還困難区域の大堀地区は今後、復興拠点として整備されるが、半谷さんは帰還できるまで10年はかかるとみる。各窯元が戻るかは微妙だ。自身は二本松市に家を買ったが、帰りたい思いは消えない。「いつ帰れるんだ」。88歳の母はよくそう聞いてくる▼半谷さんは除草剤散布などのため浪江に通う。家はイノシシに荒らされても壊す決断ができない。「年を取れば取るほど故郷は恋しくなる」と言う。今月、二本松の自宅に新しい作業場ができた。大木が見守る古里への思いを胸に再出発する。(2019.9.11) 


2019年09月11日水曜日


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