河北春秋

 黄金色に染まった稲穂の海に「緑の島」がぽっかりと浮かぶ。収穫の時期を迎えた大崎市古川の水田地帯。大友良三さん(70)、親川麗子さん(71)夫妻は先祖から受け継いだ屋敷林「居久根(いぐね)」のある暮らしを楽しむ▼母屋の北西側を中心に高さ15メートル超のモミ、杉、ケヤキなどがそびえる。季節風の被害を防ぐ一方、敷地内では落ち葉を堆肥化し、実のなる木や山野草を育てる。「春はギョウジャニンニクやウルイ、夏は野菜や桃、秋にはカキなどを収穫できる」と親川さん▼江戸時代、仙台藩は居久根の植栽を奨励し、各地に苗床を持っていた。樹木は建材や燃料に使われ、害虫を駆除する鳥や昆虫のすみかになった。多面的な役割が認識され、明治期以降も居久根は受け継がれたが、現代は危機に直面する▼生活環境の変化によって、建材としての価値は薄れ、更新が遅れた木の管理は難しいため伐採される例が増えている。次世代に向けた保全や活用策を考えようと、大崎市など1市4町、宮城県で組織する大崎地域世界農業遺産推進協議会は今月、識者を集めた検討会を発足させた▼今後、所有者向けの手引や行政による支援策の案をまとめる。「未来に残したい居久根自慢大会」を開く構想も。多様な魅力が再発見されるきっかけになるといい。(2019.9.17)


2019年09月17日火曜日


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