河北春秋

 気仙沼漁港に今季2度目のサンマの水揚げがあった今月中旬、気仙沼市内にある行きつけの店の昼食に「サンマ塩焼き定食」はなかった。「やせていて、お客さんに喜んでもらえるようなものじゃなかったよ」と店主。今季は一度もサンマを提供できていない▼先月27日、市内のスーパーに並んだ「気仙沼港初水揚げ」のサンマに、2匹658円の値が付いていた。かつて「トラックの荷台からこぼれ落ちるサンマ」の光景を見慣れた気仙沼市民にとっては、信じられない高値。手に取った年配の女性は「高級魚ね」とこぼした▼カツオは何とか盛り返したが、サンマは不漁が続く。漁場が遠く油代をにらむ漁師、今春開所した市の新魚市場、加工業者、ゆうパック、観光に至るまで影響は大きい。漁は来年以降も不透明だ。「今までにない局面。サンマ漁、サンマに関わる流通、文化が根本から変化に対応しなければならない」と語る市幹部の表情は硬い▼気仙沼市大島出身の詩人水上不二の詩に次の一節がある。<コスモス コスモス うれしそう、さんまが たくさん とれたから、さんま、さんま、さんま、あしたも たくさん とれるから>。1960年の作▼水上独特のリフレインが伝える沸き立つような秋の気分が、気仙沼に戻る日は来るのか。(2019.9.23) 


2019年09月23日月曜日


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