河北春秋

 雪が少なかった東北では暖冬による影響が今後現れることが懸念されている。福島県金山町の猟師猪俣昭夫さん(69)は今冬の猟期に、山で射止めたのは熊1頭だけ。例年10〜15頭捕るイノシシ、シカはゼロだった▼近年、急増するイノシシやシカは山の木の皮も食べ、奥会津の豊かなブナの原生林が荒れつつあるという。雪がない山では茂みに隠れ、逃げ足も速い。人里での農作物被害も深刻だ。「繁殖して数はかなり増えそう」と秋の被害を心配する▼「人と自然のバランスが崩れている」。マタギになり40年余。山を守り自然と共生する猪俣さんは近年危機感を抱く。度重なる地震や台風による災害。原発事故では県内での野生動物の出荷制限は今も続く。新型コロナウイルスの出現もしかり。「経済優先の世の中で最初にダメージを受けるのは自然。警鐘と感じる」▼これまでになかった事象を捉え、自然の叫びに耳を傾ける猪俣さん。奥会津の自然の豊かさに関心を持ってほしい。増えた野生動物を調整する猟師になる人が増えてほしいと願う▼そんな思いで猪俣さんは、東京五輪の聖火リレーランナーに応募して選ばれた。隣の三島町を走る予定だった。リレーは中止になったが、マタギの思いを再度アピールする機会は必ずあると信じたい。(2020.3.30)


2020年03月30日月曜日


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