河北春秋

 作家の故山口瞳さんは、社会人としての心構えや礼儀作法に関するエッセーを数多く残した。作家デビュー後もしばらく勤めた大手飲料メーカーが毎年4月1日に出しているウイスキーの新聞広告では、新社会人の門出を祝福し激励するメッセージを寄せた▼山口さんが1995年に亡くなった後、2000年から書き続けているのが、仙台市在住の作家伊集院静さん。1月に病に倒れたこともあり、今年はどうなるのかと心配されたが、きのうのある全国紙の朝刊に文章が載り、健在ぶりを示した▼タイトルは、「ようこそ、令和の新社会人。」。元号が代わってからは初めてとなる新社会人に、新しい力と発想を思い切り提供、提案してほしいとエールを送った▼どの年の文章も味わい深いが、中でも、東日本大震災の翌年の12年に載った「落ちるリンゴを待つな。」が印象深い。風に向かい、苦節に耐え、常に何かに挑む姿勢が、震災後のこの国では大切なことだと説いた▼新型コロナウイルスの感染拡大により、入社式を中止したり延期したりした企業は少なくない。街には閉塞(へいそく)感が漂う。新社会人にとって、決して順風満帆とはいえない船出となった。そんな時だからこそ、下を向くことなく、社会人としての大きな一歩を踏みだしてほしい。(2020.4.2) 


2020年04月02日木曜日


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