河北春秋

 「映画監督で映画館を持っているのは俺だけではないか」。宮城県涌谷町出身の若松孝二さんは生前そう自負していた。1983年、名古屋市に開館した客席数50余りの「シネマスコーレ」のオーナーだった▼若い映像作家が映画を撮っても、上映する機会がない。ならば、場所を提供しようというのがきっかけだった。ギリシャ語のスコーレは英語のスクール、すなわち学校の語源だという▼新型コロナウイルスの感染拡大による休業により、経済的な基盤が弱いミニシアターは窮地に立たされた。支援のために映画監督の深田晃司さんらが発起人となり、クラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」が設立された▼15日に募集が締め切られ、約3万人から、当初の目標だった1億円を大幅に上回る約3億3000万円が寄せられた。基金には全国の103団体、118館が参加しており、1団体当たり約300万円が分配される▼「映画を観(み)るということは『いくつもの人生を見る』ということだ」。映画通で知られた作家の故池波正太郎さんが書いたように、私たちは映画から人生とは何かをはじめ、たくさんのことを学んできた。ミニシアターのような「学びや」を街からなくしてはならない。今回の基金はその一助になってほしい。(2020.5.19) 


2020年05月19日火曜日


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