河北春秋

 国が1人当たり10万円を配る特別定額給付金や従業員を休ませた企業に支給する雇用調整助成金。手続きが煩雑だったりシステムに不具合があったりして、目詰まりを起こしている▼哲学者の内山節さんが「冷たいお金、温かいお金」という問いを立てている(『怯(おび)えの時代』)。自分の手元にある3千円は単なる交換価値にすぎないから、冷たい金。一方で、祖母が孫が喜ぶ顔を想像しながら欲しがっていた物を3千円で買ったとしたら、温かい金となる▼新型コロナウイルスの感染拡大で貧に迫る国民への10万円は本来、温かい金だったはず。ところが、マイナンバーを使ったオンライン申請が各地の自治体で混乱を引き起こし、雇用助成金は山のような提出書類を求められる。窓口業務に当たる職員の疲弊も極まり、「厄介金」の側面も▼ロッテのドラフト1位ルーキー佐々木朗希投手(岩手・大船渡高出)が、小学4年の母の日に100円ショップで買ったハンカチをプレゼントして大喜びされたエピソードを披露した。100円玉を握りしめた子の心を親が知る▼支給額の多寡ばかりが議論になるが、人のためを思えばこその給付であることを銘記したい。困窮者に向けたスピード感、分かりやすさも温かさのうち。金配りとは気配りのこと。(2020.5.23)


2020年05月23日土曜日


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