河北春秋

 1928年秋、雑誌『平凡』の創刊に当たって版元の平凡社が「模擬総選挙」の新聞広告を出している。普通選挙法による衆院選が2月に行われたが、その結果に同社は大変に不満だったらしい▼「この人ならば、われらの代表者として帝国議会に送るに足ると思わるる理想的人物を貴君の選挙区からご選出ください」。投票者は男女とも平等の18歳以上で、はがきで投票する。当時、普通選挙とは言っても女性に投票権はなかった▼思想的な弾圧も広くあったらしく、広告文は「果たして適当なる人物が議会に送られたか」と、痛烈に批判している。議員になりたい人ではなく、議員になってほしい人材を選びたい。これは現在にも通じる有権者の願望に違いない▼昨夏の参院選で地元議員らに現金を配った疑惑で、河井案里参院議員と夫の克行衆院議員が逮捕された。昭和時代の金権選挙がいやでも思い浮かぶ。返した人もいたようだが、もらう側もまた問題だ。有権者も候補者の資質を厳しく見抜く目が問われよう▼参院議員を5期務めた女性解放運動家の市川房枝は「理想選挙」を生涯訴えた。出したい人を探す、選挙違反をしない、候補者には1文(もん)も出させない−等々。『私の国会報告』に繰り返し書いている。逮捕された2人は、果たして。(2020.6.19)


2020年06月19日金曜日


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