河北春秋

 仙台文学館初代館長を務め、10年前に亡くなった劇作家井上ひさしさんが呪文のように唱えた言葉がある。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」。多くの人に分かりやすく伝えようとする信念がにじむ▼クラスター(集団)、ロックダウン(都市封鎖)、オーバーシュート(爆発的な感染者の増加)。新型コロナウイルス禍で頻発するカタカナ語を井上さんはどう評価するだろうか。思い巡らす間もなく19日には移動の自粛も全て緩和された▼東北の観光地では誘客に力が入るが、日常がすぐに戻るわけではない。尾瀬国立公園の玄関口・福島県檜枝岐村は7月1日に自粛要請を解き、入山客を受け入れる。一方「注意喚起は続けます」と尾瀬保護財団の担当者▼営業再開する山小屋は一部で救助態勢が十分でない。トイレも少なく、自ら対応できない人は入山を控えてと自己管理の努めを呼び掛ける▼山で擦れ違う人とのあいさつはマナーだと教わった。山歩き中のマスクは息苦しく危険。自然の中とはいえ密な接触は回避しないといけない。井上さんは続ける。「おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」。山での「新たな日常」を井上流に考えたい。(2020.6.21) 


2020年06月21日日曜日


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