河北春秋

 五所川原市出身の歌手吉幾三さん風に歌うとしたら「ハァ金が無ぇ、技術が無ぇ、地元同意はもちろん無ぇ」といったところか。特に安全の根幹を成す技術がなかったのだからあきれる▼政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画を撤回した。ミサイルのブースターを演習場内に確実には落とせないという。演習場が内陸にある山口県では当初から問題視されていた▼もう一つの予定地だった秋田では演習場が住宅地と隣接し、地元住民らが不安をぶつけてきたが防衛省は「問題ない」の一点張り。風向きが変わったのは昨年6月に調査ミスが発覚してからだ▼撤回表明した河野太郎防衛相は行政改革担当相を経験し「コストカッター」の異名を持つ。核燃料サイクル廃止論者としても知られ、5年前の自民党部会では核のごみの最終処分場なきサイクルを「フィクションだ」と言い切った▼地上イージスの国内配備の可能性はほぼゼロになったものの、一連の経緯で明らかになったのは一度走りだしたら地元の声を無視してでも進められる国策の怖さだ。コロナ禍で財政が厳しい時期でなかったら? 防衛相が河野氏でなかったら? フィクションが現実のものになっていたかもしれない。そう考えると国への不信感は残ったままだ。(2020.6.27) 


2020年06月27日土曜日


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