河北春秋

 戦前、日本銀行の総裁を務めた深井英五という人が「一石三鳥の妙手」と評価したお金の調達法がある。政府が公債を発行し、日銀が買い、時期を見ながら民間に売り渡す。近年は普通に行われる国債の日銀引き受けのこと▼昭和の初め、緊縮財政の井上準之助蔵相に代わった高橋是清蔵相は、対照的に積極財政を推進した。公債で財源を確保し、資金を民間に回し、増税を抑えて景気回復を図った。この「高橋財政」によって世界的な不況から日本はいち早く脱した▼「その政策を取った後、経済は着実な回復を示した」。昭和経済史に詳しい故中村隆英さんが著書『昭和恐慌と経済政策』でそう分析している。中村さんのこの本は、コロナ不況にあえぐ現在にも通じる積極財政の勧めとして、読むことができるだろう▼5月の完全失業率は急激に悪化し、全国の失業者は200万人に迫った。新型コロナに絡む解雇は全国で3万人を超えた。東北の求人倍率は5年7カ月ぶりの低水準だという。脆弱(ぜいじゃく)な地域経済が打撃をもろに受けている▼「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、予定通り引き上げる」。昨年秋の消費税増税を前にして政府関係者が何度も口にした。今はリーマンを超える事態だ。消費税を含む大幅な減税が不可欠では。(2020.7.3)


2020年07月03日金曜日


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