河北春秋

 宮城県松島町の瑞巌寺に、「松島や光と影の眩(まぶ)しかり」の句碑がある。台湾元総統の李登輝さんが2007年、念願だった奥の細道探訪の旅で詠んだ。翌年の除幕式には「日本と台湾がより緊密になることを祈ります」とメッセージを寄せた▼台湾出身者初の総統となり、1996年に総統直接選挙を実現した李さんが97歳で亡くなった。現地の新聞は「民主先生(ミスター・デモクラシー)、100年にまれに見るリーダー」と悼んだ。一方、台湾との統一を目指す中国は淡々と報じ、李さんの追悼で独立志向が高まることに警戒感を示した▼日本統治下の台湾で生まれ、京都帝大(現京大)に進んだ。農業経済学を学んだのは、『武士道』などの著作に影響を受けた新渡戸稲造が農業経済学の研究者でもあったため。親日家として知られ、00年の総統退任後も日本に理解のある発言を続けた▼東日本大震災から4年後の15年にも宮城県を訪れ、震災のがれきで造成した岩沼市の「千年希望の丘」で慰霊碑に献花し、被災者を直接励ました。被災地にも思いを寄せ続けた▼世代交代が進んだ台湾の指導層と日本の政治家との関係は、李さんの頃に比べて希薄になりつつあるという。今後の日台関係は李さんが託したメッセージのようになるのだろうか。
(2020.8.1) 


2020年08月01日土曜日


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