河北春秋

 映画監督の相米慎二さんに『台風クラブ』という名作がある。1985年の第1回東京国際映画祭で最高賞を受賞した。しかし「残念なことに、海外では紹介されなかった」と映画監督の黒沢清さんが語っている▼生前の相米さんはインタビューを嫌った。極端に口数が少なく、作品について語らない。そのため海外で評価される機会を逸してしまった。親交があった黒沢さんは著書で「僕ならせっかくのチャンスを生かしたい」▼「映画作家である僕の責任として受け答えをする。主語と述語をはっきりさせ、外国語の質問に答えることで僕は作家になっていく経験をした」。数多い作品を世に送って、黒沢さんは「世界のクロサワ」と今では呼ばれる▼作品には分かりやすく明快なメッセージがあったのだろう。ベネチア映画祭で新作『スパイの妻』が監督賞を受賞した。黒沢さんにはカンヌでの入賞経験もあるが、今回の賞はそれを超えるコンペティション部門の重要な栄誉だ▼この作品は高精細の「8K」で撮影され、6月にNHKで放映された。8Kは暗い夜のシーンでも艶のある明瞭さで撮影できるのが特色だ。映画は今、従来とは異なる新たな映像表現を可能とする時代を迎えている。来月に予定されている劇場公開を心待ちにしている。(2020.9.16)


2020年09月16日水曜日


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