河北春秋

 満開の桜がもうもうとした煙に包まれていた。十数年前、気仙沼市に赴任した時のことだ。市内の花見の名所の一つ、大川沿いでホルモンを炭火で焼いて食べる光景を目の当たりにして驚いた▼豚の生の内臓肉をニンニクが利いたみそだれにまぶして焼く気仙沼ホルモン。ウスターソースをかけた千切りキャベツとともに食べる。独特の食文化として地元の有志らが情報発信し、今やすっかり有名になった▼津軽南部の平川市でも「ご当地焼き肉」を地域おこしに生かす取り組みが始まっている。リンゴ生産が盛んな同市では、農作業の合間などに、仲間内や家族で焼き肉を楽しむ習慣がある。市民はそれを「にぐ」と呼び、大人数で囲めるコンロや網が各家庭に用意されている▼中でも一番人気はサガリ肉。豚や牛の横隔膜のことで、軟らかく脂身が少ないのが特長。東北で消費される豚サガリの半分以上が平川を中心とする津軽で食べられているというデータもある。豚はみそだれ、牛はしょうゆだれに漬け込む▼精肉店主らが昨夏、「平川サガリ研究会」を結成。先日はバーガーやおにぎりといったメニューを披露した。地元では当たり前の食文化も、工夫次第で地域の資源。「平川といえばサガリとPRし、誘客につなげたい」と意気込む。(2020.11.22)


2020年11月22日日曜日


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