紙面センサー

多様な連携新時代開く/紺野純一(東北観光推進機構専務理事推進本部長)

 東日本大震災から11日で8年を迎えた。本紙は社説で7日から11日まで「大震災8年」の歩みと現状について主張を展開した。特集や関連記事にも紙面を割き、鉄道や道路をはじめ、社会インフラが確実に復旧・復興する中、地域住民の頑張る姿や笑顔、前向きな取り組みを写真入りで伝えた。私たちも大いに元気づけられた。
 一方で、課題が山積していることにも思いをはせねばならない。
 8日社説は「被災者は自宅から避難所、仮設住宅へと住まいを移し、人間関係の喪失と創出を繰り返してきた」と指摘。9日社説は、原発事故に絡み福島県のアーカイブ拠点施設について「単なる展示施設…交流人口の拡大に主眼を置くような観光施設にとどまらせず、原子力を推進してきた地域の歴史まで再検証し、未曽有の人災を二度と招かないための研究を進める役割を」と提言した。
 11日の社説は、現状をつづりながら「歳月を経ても」、なお「復興は途上だ」と訴えた。

 私たちは、親族らとの血縁、農耕民族が由来とされる共同体発祥の地縁、高度経済社会が生んだ企業による「社縁」など、社会とのつながりを大切にしてきた。最近は、趣味のサークルなどによるつながりにも生きがいを見いだし、大切にされている方も多い。
 『絆』という言葉が再認識されたのも大震災の時である。社説が指摘したように、失われた人間関係を創出することは、沿岸部を中心に東北全体が抱える人口減少と相まって喫緊の課題である。震災の記憶や観光の施設にとどまらない、交流人口拡大から一歩踏み込んだ指摘にも貴重な示唆がある。
 5日の河北春秋は、コンビニ24時間営業がテーマだった。時代を先取りして「変化対応」でビジネスモデルを構築してきたスタイルが「便利さを追求するあまり、何か大切なことを見失っていないか。…消費者の意識も問われている」との警鐘に、働き方改革などと重ねて考えさせられた。

 東北の訪日外国人宿泊者数は震災前の2010年が約50万人。震災翌年の12年は約18万人に激減したが、18年は約121万人となった。復旧・復興と共に、インバウンドにも東北の重層的な取り組みが花開いてきたことを物語る。
 20年東京五輪・パラリンピック組織委員会は、全国の伝統工芸品と組んだ大会公式商品制作プロジェクトの第1弾として、被災3県の「南部鉄器」「玉虫塗」「大堀相馬焼」「白河だるま」の販売を始めた。そうした歴史・伝統と、連携に裏打ちされた取り組みにも磨きをかけていきたい。
 デジタル社会の本格的到来で情報伝達手段が大きく変化する中、新聞が持つ優位性を発揮し、大局的な視野と、日頃から地域と歩む記者の現場力を大切に、正確な情報発信、課題提起、検証を読者に提供し続けることを期待する。
 「『東』は、未来」を本紙は掲げる。東日本大震災から8年が経過した今、東北から新しい時代の幕が、多様な連携の新しい力で開かれることを望んでいる。


2019年03月15日金曜日


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