紙面センサー

問題の核心 踏み込んで/吉田浩(東北大大学院経済学研究科教授)

 10月下旬から11月上旬、台風19号関連記事が紙面の多くの部分を占めた。初めて紙面に登場した10月7日から1カ月間、本紙に掲載された台風19号関連記事は828件だった。同じ期間、安倍晋三をキーワードとする記事136件と比較すれば、この台風がわれわれの暮らしにいかに大きな影響を与えたかが分かる。この台風19号の発災の後、本紙が「生活関連情報」面を特設、掲載している点は高く評価できる。当初は、金融、交通、電気などの情報であったが、後にはボランティアや入浴支援情報など、ニーズに合わせた項目が用意されてきている。

 次に10月30日の社説、「徴用工問題の合意案 GSOMIA破棄の撤回を」を取り上げる。
 「基金は元徴用工への補償ではなく、経済発展を目的にするという」と解説し、その上で「慰安婦合意の二の舞にならないような歯止めを徴用工の合意案には盛り込む必要がある」と懸念を示している。この点は極めて重要な視点である。慰安婦合意の際は不可逆な決定とされていたにもかかわらず、結局日韓合意は事実上奏功しなかった。今回は、徴用工問題を直接に解決するという名目がない分、ほごにされる可能性がより高い。この点に関し、その妥当性についての判断に踏み込んでも良かったのではないか。
 報道には中立性が求められるが、「社説」は報道機関としてのオピニオンを示す場であり、当局発表情報に基づく客観報道に対し、自ら調査の視点や問題意識を持って取材、掲載する「調査報道」と並んで、そのメディアの存在証明をなす部分であると考えられるからである。他の新聞社の社説でも、GSOMIAの破棄期限を前に、対話姿勢を強化せよという表面的な主張で終わるものが多い中、例えば産経新聞は11月6日の「主張」(社説)の中で、「融和ポーズに騙(だま)されるな」と否定的な見解を明確にしている。

 最後に「調査報道」に準じるものとして、10月27日に投開票された宮城県議選の候補者79人に対する本紙独自のアンケート結果を取り上げたい。投開票日直前の25日みやぎ面に、候補者の約7割が村井県政を評価し、震災復興が重視する県政課題のトップであったという結果が掲載されている。地域の重要な問題に関し、定量的な根拠を持って報道する本紙の姿勢は評価できる。しかし、問題の核心は、これら候補者の政治姿勢が、有権者側の県政への評価や重視している課題と齟齬(そご)はなく、県民の意思に沿った代表たり得ているかという点にあるといえよう。
 昨今、投票率低下だけでなく、候補者不足も指摘されている。今回の宮城県議選も幾つかの選挙区は無投票だった。このままでは、有権者の意思をしっかりと行政の執行部に伝えることができないのではないか。このような問題意識を持った上で、候補者へのアンケートと併せて、有権者の意思との整合性を検証する記事があれば、このアンケートの意義は何倍にも増したことであろう。


2019年11月15日金曜日


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