紙面センサー

深みある調査報道 期待/吉田浩(東北大大学院経済学研究科教授)

 11月下旬から12月上旬にかけては、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新問題、中曽根康弘元総理の逝去、アフガニスタンにおける中村哲医師の襲撃のほか、われわれの身近な出来事として女川原発再稼働適合判断、仙台市のガス事業民営化問題、阿武隈急行の運行再開などさまざまなニュースがあった。

 11月26日朝刊1面はそのニュースラッシュを象徴していた。トップは「女川2号機『合格』へ」。原子力規制委員会が女川原発の新規制基準への適合を認める見通しを報道した。その左には「復興必ずかなう ローマ教皇、震災被害者と集い」を伝え2、3、4、30(社会)面と関連記事面が付けられている。左下には「香港区議選 民主派圧勝」がある。右下には仙台市の照明灯損失問題。市の管理職が当初の半額から負担を増やし、全額を補填(ほてん)するべく方針転換する記事が掲載され、19(みやぎ)面の関連記事へと続いている。情報量は多いが、前日の25日夕刊1面と似ている。
 25日夕刊1面は「香港区議選 民主派圧勝」がトップで、翌日朝刊にも同様の記事がある。その左には「照明灯問題 仙台市全損失額穴埋め」の見出しがあり、朝刊の本文もほぼ同じ内容。最もスペースを割いている「復興『必ず果たせる』 ローマ教皇、震災被害者と集い」も過半の文章が朝刊に再掲されている。
 26日朝刊1面の主要4記事のうち、三つが前日夕刊と類似度が高い。女川原発については翌27日夕刊1面で原子力規制委員会が26日記事の見通し通り実際に「審査書案」を了承した時点で、26日朝刊記事とほぼ同じ文章が再度、掲載されている。
 重要なニュースは繰り返し伝える、朝刊だけの読者にもニュースの推移が理解できる紙面を目指すことは理解できる。せっかく朝刊と夕刊という読者に情報を伝えるダブルのツールがあるのだから、夕刊には「速報性」を、朝刊には追加取材による「深みの増した記事」を期待したい。

 私は、過去2回の「紙面センサー」において、新聞の存在意義を「調査報道」ができるか否かにあることを強調してきた。4日から3回にわたって連載された「女川再稼働を問う 未完の避難計画」では、本紙の取材力・調査報道力を頼もしく思わせるものであった。「原子力問題取材班」が地元に根差した取材をしている。有事、原発近隣住民がスムーズに避難できるか、その受け入れ態勢に焦点を当てた記事であった。
 今後は温室効果ガスの問題や、先進国として、より高度な技術と安全管理の下で原子力エネルギーを使いこなし、発展途上国へ化石燃料を譲るという視点など、多角的な観点から東北、日本のエネルギー政策の在り方を検証する取材に期待したい。それは、26日朝刊4面に全文掲載されたローマ教皇演説の「天然資源の使用に関」する「勇気ある重大な決断」に対するもう一つの回答にもつながると思われるからである。

 この批評は河北新報の最終版(朝刊16版、夕刊)をもとにしています。


2019年12月15日日曜日


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