紙面センサー

トップ記事の判断 注目/吉田浩(東北大大学院経済学研究科教授)

 昔、ビジネスマンの在り方を指南する文書に、地方出張の際、新聞を一つだけ買うなら「全国紙でなく地方紙」とあったのを記憶している。地方紙はその地元でしか手に入らない。出張先の情報は全国紙より地元新聞の方が何倍も詳しいからであろう。本紙のこの1カ月の1面トップ記事のラインアップからは、まさに東北の新聞というべきスタンスを感じた。

 この1カ月、われわれの生活の中で最大の話題は、言うまでもなく新型肺炎の発生と流行であろう。テレビ、週刊誌や全国紙もこぞってこの話題を報道した。では、この時期の本紙朝刊1面トップの記事を新型肺炎の事態の推移とともに振りかえってみよう。
 「新型肺炎国内2例目」の衝撃の走った1月25日のトップは「宮城沖(地震)M7.4 30年内60%」であり、その「新型肺炎が指定感染症に」なった28日は、山形の老舗百貨店の自己破産である。翌29日も「新型肺炎 初の国内感染」を抑え、トップは「石巻・鮎川 捕鯨拠点に」だった。
 2月に入り1日はさすがに世界保健機関(WHO)の「緊急事態宣言」にトップのポジションを譲ったが、その左に2番手のニュースとして石巻の老舗造船会社の会社更生法申請を報じている。3日には「新型肺炎 死者300人超」という記事の隣のトップで原発ADR(裁判外紛争解決手続き)において東京電力が「請求放棄 和解の条件」としていることを伝えた。4日は横浜港「クルーズ船3500人検疫」のトップの左で「宮城県宿泊税 一律300円」をしっかりと掲載している。翌5日には新型肺炎「入国拒否 対象拡大も」の右側でトップのポジションをキープしたのは水道事業における談合の疑いで「多賀城市幹部を逮捕」である。

 ニュースにおけるトップ記事の条件は何であろうか。まずは社会に与える影響の重大性であろう。読者の興味関心に応えるという観点も必要であろう。事態の推移と報道のタイミングも重要である。しかし、新聞、そして地方紙が持つもう一つの役割、「地域の、地元の出来事を記録する」という点に私は注目したい。
 全国紙の視点からすれば、圧倒的にニュースの重みは新型肺炎であろう、速報性を重視するテレビの立場としても、やはり新型肺炎をトップに据え、視聴者の興味を引きたいところであろう。しかし、冒頭述べたように、地方紙はその地元のニュースを取材する力に固有のアドバンテージがある。新聞は後々まで残るストック型のメディアであることを考えれば、トップ記事の判断基準は当然に異なって良いと思われる。
 新型肺炎のニュースが行き交う中で、本紙がトップで伝えた記事は、地域の経済と暮らしに大きな関わりのある出来事であり、地元紙ならでは取材の結果であると言える。ニュースの発信側にもさまざまな性格のメディアがある。われわれ読者もニュースソースを使い分ける巧みさが必要であると思われる。


2020年02月15日土曜日


先頭に戻る