紙面センサー

心の復興へ「事例」求む/斎藤純子(特定非営利活動法人せんだい杜の子ども劇場代表理事)

 東日本大震災から9年となった11日の朝刊。1面に現在の宮城県南三陸町の航空写真が載っている。「変わる古里 変わらぬ思い」という見出しで「心の復興はこれからが正念場。取り残された被災者の心に光が差すまで、歩みを支えたい」と記事を結んでいる。
 3面に福島県富岡町の帰還困難区域の一部避難指示解除がある。4、5面では会員制交流サイト(SNS)で実施したアンケート、「3.11どう過ごしますか」に寄せられた数々の声や思い、行動を、そして全紙面で各地、各方面における震災からの「今」を伝えている。11日夕刊、12日朝夕刊を含め、少しでも多く震災報道をしたいという本紙の思いが感じられた。一連の報道は記事と写真が一体化しており、読者は被災地やそこで暮らす人々をより身近に感じ、深く心に刻んだのではないか。
 11日朝刊16、17面特集「被災3県の今」にはこの9年の復興の達成度や推移を示す数字、グラフ、地図などを掲載した。インフラ整備は進んでいるが、人口減や経済活動の伸び悩みを分かりやすく見せており、現在の状況を理解する上で大変参考になった。一方で、「心の復興はこれからが正念場」なら、被災者の心の状態をどのようにとらえ、対応していくべきか、何らかのデータや事例も取り上げてほしかった。

 毎週木曜日夕刊のものがたり「がんづきジャンケン」は震災発生からある家族がたどった日々を描いている。読みながら、わが家の防災と家族の絆について語り合える。この時期にふさわしい。
 18日第2朝刊の第3回仙台短編文学賞大賞と河北新報社賞を読んだ。震災から今に至る心的描写はあの時を思い起こさせる。477編の応募があったとのこと。ぜひ継続させてほしい。
 17日の朝刊1面で相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者、職員45人を殺傷した男に横浜地裁が死刑判決を言い渡したことを伝え、社会面などにも関連記事を載せた。被告の差別主張の背景や成育歴などの究明が不十分だったこと、ほとんどの被害者やその家族が匿名で審理が進んだことについて専門家や裁判員が感想を述べている。28面の被告逮捕時の「笑みを浮かべる」写真には強烈な印象を受けたのだが、新聞にはもっと被告の根底にあるものを探ってほしかった。
 19日の社説は「事件からどんな教訓を考えるべきなのか」と問い掛けている。「障害者に対する差別意識が潜んでいないのかどうか、自ら問いただす契機としたい」は強く首肯できる。専門家や読者、社説を交え、紙面上で意見をキャッチボールしながら考える必要があるのではないか。同様に虐待、差別、弱者と強者、暴力、殺傷の根底にあるものに迫るけん引役と場づくりを新聞は担ってほしい。

 15日の前回紙面センサー、筆者の吉田浩氏が「週刊かほピョンプレス」活用を提案した。後日、仙台市宮城野区の榴岡児童館にも「プレス」が届いた。意見のキャッチボールが実現したケースと言える。


2020年03月31日火曜日


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