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10万円給付金 総括必要/熊沢由美(東北学院大経済学部共生社会経済学科教授)

 懸念されていたように、新型コロナウイルスの経済活動への影響は、かつてないほど深刻である。2日朝刊経済面には、上場企業の2020年1〜3月期の純損益が合計で1兆円超の赤字に陥ったことが載った。6日朝刊1面では、4月の経済指標が軒並み過去最大の落ち込みと伝えられ、将来への危機感が募る記事が目立った。
 5月30日朝刊1面では、東北6県の4月の有効求人倍率が1.23倍と、4年10カ月ぶりの低水準になった状況も報じられた。
 5月31日朝刊1面では、宮城県内の自動車関連の企業が大手の生産計画を注視しつつ、雇用への影響を最小限に抑えようと苦慮していることを克明に伝えた。この記事でコロナ禍が地域経済に与えるダメージの深刻さが浮き彫りになった。コロナ禍の地域経済への影響を詳しく報道するとともに、地域の活性化につながる前向きな話題も多く取り上げてほしい。

 新型コロナ対策として、国民に1人10万円を支給する特別定額給付金は、読者の関心が高い話題である。6月5日朝刊1面で宮城県内の支給状況を河北新報社が調べて報じた記事は、読者の疑問に応えるものであったと思う。事業開始から約1カ月となる1日時点で、ほぼ支払いが終わった七ケ宿町の98.1%に対し、仙台市は0.2%と、あまりにも大きなばらつきがあることに驚かされた。
 筆者の周囲でも「申請書が届いた」「まだ届かない」と話題になったが、この記事を見て納得した読者も多かったのではないか。今後も生活者の視点に立った報道姿勢で、読者に寄り添った記事を届けてほしい。
 5月30日朝刊4面では、特別定額給付金のオンライン申請でトラブルが各地で続出したことを伝えた。新型コロナ対策によって、日本社会の弱点があらわになった一例かもしれない。
 結局、特別定額給付金のような一律の給付金で本当に良かったのだろうか。今後も給付金の使い道や意義などを深く、継続的に取材し、総括してほしい。

 テレビの人気リアリティー番組「テラスハウス」での言動を会員制交流サイト(SNS)で激しく誹謗(ひぼう)された、プロレスラーの木村花さんが亡くなった。自殺と見られているが、なんとも痛ましい死であった。
 5月27日朝刊1面の河北春秋では、歌人の河野愛子さんの<子は抱(だ)かれみな子は抱かれ子は抱かれ人の子は抱かれて生くるもの>を引用し、木村さんの死を悼んだ。
 「亡くなったのはそのように育ち、恐らくそのような母になったであろう22歳である」と書いている。木村さんが誰かの大切な家族であったことを言いたかったのだろう。
 しかし、「母になったであろう」は蛇足ではなかったか。女性の生き方は多様になっている。人によっては、女性は母親になるのが当たり前のように書かれていると感じ、違和感がある表現だったのではないだろうか。


2020年06月14日日曜日


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