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「幸福度」多様に伝えて/熊沢由美(東北学院大経済学部共生社会経済学科教授)

 8月27日朝刊1面で、花巻市に寄贈された宮沢賢治(1896〜1933年)の資料の中から、直筆とみられる草稿が見つかったことが報じられた。
 その草稿は、賢治が病床で書いた「疾中詩群」の一編「S博士に」。S博士とされる佐藤隆房氏(故人)は、花巻市の総合花巻病院の前身である花巻共立病院の初代院長。今回、病院が市に寄贈した佐藤氏のコレクション約4000点のうちの一つだという。
 賢治の「銀河鉄道の夜」などをモチーフにした、人気シンガー・ソングライター米津玄師さんの楽曲「カムパネルラ」が話題になる中、賢治の影響力の大きさと共に東北の文化的な豊かさを感じながら、興味深く読んだ。
 28日朝刊みやぎ面で先人の医療従事者の記事を読み、感銘を受けた。「知ろう 伝えよう みやぎ 先人の足跡」で取り上げられた、角田市出身の仙台赤十字病院初代院長の佐藤基(はしめ)氏(1894〜1968年)である。世界で初めてインスリンを発見したとされ、ノーベル医学生理学賞まであと一歩だったという。業績だけでなく、人柄をも伝えた取材力に感心した。
 同じ面では、塩釜市の坂総合病院初代院長の坂定義氏(1866〜1937年)の生涯を記した書籍も紹介している。タイトルでもある「医者屋にならず」という言葉が印象的だった。
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 国が国民1人当たり10万円を配る特別定額給付金の申請を、仙台市は8月26日に締め切った。同日朝刊みやぎ面では、仙台市職員らが25日に未申請の単身高齢者や障害者世帯を戸別訪問したことを伝えた。市職員が持参したコピー機を使って書類作成を手伝うなどして、約180世帯を回って約2割を申請につなげたという。
 9月2日朝刊みやぎ面によると、最終的に仙台市では給付対象の99.5%に当たる世帯から申請があり、未申請は2492世帯だった。この事業は膨大な事務作業で想像以上に大変だったと思う。市職員の働きに改めて頭の下がる思いがした。
 一連の特別定額給付金の記事からは、申請者の思いや行政の対応を丹念に伝えようとする報道姿勢が感じられた。
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 4日朝刊3面で伝えられた国連児童基金(ユニセフ)の幸福度に関する記事も目を引いた。先進・新興国38カ国に住む子どもへの調査で、日本の子どもは生活満足度の低さ、自殺率の高さから、「精神的幸福度」が37位と最低レベルであった。
 「身体的健康」は1位で、経済的に比較的恵まれていても、学校のいじめや家庭内の不和などを理由に、幸福を感じていない実態が明らかになったと伝えている。
 筆者は、日本の子どもの貧困率が比較的高いと認識しており、その影響に触れられていないことを意外に感じた。関連データを分析し、多様な意見や東北の実態についても取材し、説得力のある河北新報社らしい続報があることを期待している。


2020年09月15日火曜日


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