社説

仮想通貨流出/利用者保護ルール 整備急務

 金融庁はきのう、不正アクセスによって顧客26万人の約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が外部流出した仮想通貨取引所大手「コインチェック」(東京)に対し、立ち入り検査に入った。
 コインチェックは自己資金を原資に合計460億円の補償を表明しているものの、時期や方法など不明な点も多い。金融庁は支払い能力が十分あるのかどうか、原因究明と共に厳しく問うべきだ。
 そもそもの原因はコインチェックのずさんなセキュリティー管理にあるとはいえ、技術革新が期待できる仮想通貨の成長性に配慮した緩やかな規制が、結果的に裏目に出たのではないか。
 麻生太郎金融担当相は先の記者会見で、「イノベーションと利用者保護のバランスが大切だ」と語ったが、軸足を置くべき方向は利用者の保護であるのは明らかだ。
 金融庁は仮想通貨取引所の新規登録についての審査を従来よりも厳格化する検討を始めたという。それでも、後手に回った感じは拭えない。
 コインチェックは顧客の仮想通貨を預かる際、インターネットから遮断したコンピューターで保管するのが常識にもかかわらず、こうした基本的な対策を怠っていた。
 しかも約20分の間に被害のほぼ全額が特定のアドレスに送金されていたのに、流出に気付いたのは半日近くたってからだったという。危機管理は一体どうなっていたのか。
 金融庁は既にコインチェックに業務改善命令を出している。さらに国内にある全ての仮想通貨取引所に対して、安全管理体制について報告を命じた。警視庁は不正アクセス禁止法違反容疑などを視野に捜査するとみられる。
 仮想通貨は1000種類以上あり、約60兆円規模とされる。決済、送金の手段といった側面よりも、今は投機の対象で価格は乱高下しがち。
 注意しなければならないのは中央銀行などが発行する貨幣と違って、不測の事態が起きても何の保証もないこと。実際、取引所が経営破綻に至るトラブルが起きている。
 このため、昨年4月に施行された改正資金決済法で、取引所の登録制が導入された。現在の登録業者は16。このほかコインチェックのように審査中でも営業が認められた「みなし業者」が16ある。
 法改正前から取引所を運営していた業者に対する特例というが、「仮免許」の業者を甘やかしてはならない。いつまでも審査に合格できないケースについては、締め出すことも検討すべきだ。
 仮想通貨は金融商品の性格も併せ持つ。市場の安全性、透明性を担保する業界の自主規制はもちろん、利用者保護のためのルール整備を急ぐべきではないか。
 われわれも一獲千金の「バブル」に躍らされることなく、仮想通貨のリスクを見定める必要がある。


2018年02月03日土曜日


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