社説

気候変動適応/当事者意識持ち対応急げ

 気温の上昇、農作物の品質低下、動植物分布の変化…。地球温暖化による影響が深刻化するのを見越し被害を軽くしようと、国や自治体に計画作りなどを促す法案が今国会に提出されている。「気候変動適応法案」という。
 自治体の中には既に先駆的な対応策に取り組んでいるところがある一方、全体的に具体的な施策や行動は遅れているという。影響の大きさが心配される農林水産業は東北の基幹産業であり、東北の自治体も当事者意識を持って、少しずつでも今から対応することが求められよう。
 これまで日本の温暖化対策は、地球温暖化対策推進法による温室効果ガスの排出削減対策に限られていた。適応法により被害の回避や軽減といった対策が初めて法的に位置付けられることになる。
 温暖化の進行を抑える緩和策と、影響度を評価して対応する適応策は本来、同時に進めるべきもの。あるべき態勢がようやく整えられる意義は大きい。私たちが具体的な対応を迫られるまでに事態が進行し、深刻度を増しつつあることの証しでもある。
 法案は国に適応計画の策定を義務付けた。環境相は温暖化の影響をおおむね5年ごとに評価。この結果を基に国は適応計画の内容を見直す。
 国に加え、自治体などが担うべき役割を明確にしたのも特徴だ。これは当然だろう。温暖化で受ける影響は地域によって異なり、対策の優先度をどうするかも地域によって異なるからだ。自治体は地域計画の策定、情報収集や助言の拠点確保が求められる。
 世界の平均気温は産業革命前と比べて既に1度ほど上昇している。これが1.5〜2度を超えると自然災害が増えたり、生態系が破壊されたりといった被害が生じるとされ、2040年代にも1.5度を超える恐れがあるとの指摘がある。
 農水産物は収量や品質の低下などが見込まれるため、既に適応策を進めている自治体もある。夏の猛暑で有名な埼玉県熊谷市は、暑さに強いコメの品種を開発。熊本県では数年前からノリが高水温に耐えられる品種改良に当たる。
 ただ「温暖化問題は、数多い行政課題の中で最優先になりにくい」(ある自治体)という事情もあり、全体として対策が進んでいるとはいえないようだ。国は15年、いったん適応計画を作り自治体にも策定を呼び掛けたが、具体策は不十分だったという。
 温暖化の影響は広範だ。自治体によっては熱中症対策に街中での一時避難所づくりを進めたり、河川整備に際し大雨を考慮したりするところもある。河川や下水道などハードの整備は急にはできない。
 行政は産業や生活面での対策はもちろん、まちづくりも含め分野横断的に温暖化を考慮し段階的に対策を織り込んでいくべきだ。行動に移すべき状況の中に私たちはいる。


2018年03月22日木曜日


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