社説

シリア攻撃/内戦終結がかえって遠のく

 軍事攻撃を行えばかえって悲惨な内戦の終結を遅らせてしまう。国際社会のそうした懸念が現実のものになるのではないか。米英仏の3カ国がシリアに対し、14日、軍事攻撃に踏み切った。
 シリアのアサド政権が非人道的な化学兵器を使用し多数の市民を殺傷したとして、米軍は化学兵器を保管していると見られる施設や研究施設などを巡航ミサイルで攻撃。英空軍も軍の施設などをミサイル攻撃したという。
 長期化する内戦を終結に導くために必要なのは、性急な軍事介入ではない。まずは米国とロシアの対立で停滞している国連安全保障理事会を一刻も早く機能させ、その上で、国際社会が深く関与しシリア国内の停戦と和平を実現することだ。
 シリアの内戦は、アサド政権、反体制派、クルド人勢力が入り交じり、それぞれ「テロとの戦い」を掲げて泥沼化の様相を呈している。ロシアはアサド政権に、他方、米国はクルド人勢力に対して、共に武器提供などの軍事的支援を行ってきた。
 米ロの両大国に加え、国内にクルド人問題を抱えるトルコも交え、国家間の利害が複雑に交錯する。内戦は既にシリアだけにとどまらない「国際紛争」の段階に入り、米ロの新たな冷戦という深刻な様相も呈している。
 米英仏が軍事攻撃の理由としたアサド政権による化学兵器の使用は、事実だとすれば容認できるものではない。化学兵器の使用を究明する新たな機関の設置を巡り、国連安保理でロシアが拒否権を行使したのも不可解だ。
 化学兵器禁止条約に基づく国際機関である化学兵器禁止機関(OPCW)の調査団がシリアに入り、化学兵器の使用疑惑の調査を始める。結果のいかんにかかわらず安保理は直ちに平和構築に向けた討議を加速すべきだ。
 内戦が激化した2011年以降、シリア国内の被害状況は、死者・行方不明者が50万人以上。負傷者は250万人に上り、さらに数百万人の国外避難民を生み、国内の避難民は数百万人に上るといわれる。建築物を含む各都市の破壊もすさまじい。
 復興のためには膨大な費用を要し、国際的な枠組みによる支援なしには到底、達成できるはずがない。早期に和平を実現し、内戦で破壊された国内の立て直しをどう図るかも含め議論すべきなのに、国連がまともに機能していないのがもどかしい。
 2月の安保理会合でグテレス事務総長は、首都ダマスカス近郊では40万人が「この世の地獄」での暮らしを強いられているとして、即時停戦を訴えた。今回の軍事攻撃に関しても「事態を悪化させ、シリアの人々をさらに苦しめる行動」をやめるように加盟各国に要請した。グテレス氏の言葉を各国は深刻に受け止めてもらいたい。


2018年04月15日日曜日


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