社説

地方議会研究報告/手続きも中身も不可解だ

 余計なお世話ではないか。そんな印象の報告書である。
 地方議員のなり手不足解消を目指し、総務省の「町村議会のあり方に関する研究会」が報告書をまとめた。内容もさることながら、まずもって手続きがふに落ちない。
 研究会は小田切徳美明大教授(農村政策論)を座長に学者のみ8人で構成。地方議会の在り方を話し合うのに当事者が一人もいないのは、いかにも不自然だ。
 会合は非公開で、3月に突然報告書が示された。住民自治の根幹に関わる制度改正というのにヒアリングもせず、出席者にかん口令まで敷いて協議は密室で進んでいた。
 今後、首相の諮問機関の地方制度調査会で検討し、早ければ来年の通常国会で法改正を目指すという。
 まるで法制化が既定路線のように映るが、地方議会の関係者は「改革の名に値しない」と反発しており、すんなり事が運ぶとは思えない。
 地方議会について研究会は、多くの議員が副業的に活動をする「多数参画型」と、少数の専業的議員から成る「集中専門型」を提案。これに現行型を加えた3類型から地域の実情に合わせて議会の形態を選択できるとした。
 多数型は議員が非専業的に活動し、報酬も副収入程度に抑制する。広く兼業・兼職を認め、議会は本業と両立できるよう夜間や休日に開く。
 専門型は議員に生活が成り立つ水準の報酬を支給。重要議案は、有権者の中から選任された議会参画員が審議に加わって議会を補完する。
 どちらも住民参加に道を開く提案のように見えるが、報告書では3類型をそれぞれパッケージにして三者択一を迫っている点に留意したい。
 議会の夜間・休日開催も住民参加も既に実践例は多く、現行制度で十分対応できることが証明されている。パッケージ化は地方議会から裁量の余地を奪う「義務付け・枠付け」であり、各地の先進議会が積み重ねてきた改革の努力に水を差しかねない。
 多数型では兼業議員、専門型では少数議員が執行部と対峙(たいじ)することになる。いずれにせよ監視機能の弱体化は避けられ得ないだろう。
 兼業・兼職を緩和して自治体と取引のある企業の役員や首長の下で働く自治体職員が議員になった場合、契約や財産の取得・処分といった議決の公平性をどう確保するかが課題になる。
 報告書はこれらの項目を議決事項から除外すればいいとしているが、これでは住民の代表機関の権限が縮小する。
 研究会、あるいはその背後に控える総務省自治行政局の真の狙いは何なのか。
 そもそも議員のなり手不足は大規模議会も小規模議会も同じなのだから、町村議会を狙い撃ちにしたと受け止められても仕方あるまい。地方自治を形骸化させかねない制度改正には、強く反対する。


2018年04月16日月曜日


先頭に戻る