社説

激変する英語教育/過去の検証がまずは必要だ

 学校の英語教育が大幅に変わる。小中高校の学習指導要領が改定され、小学校では2020年度、中学校では21年度から新指導要領に基づく英語教育が全面実施される。既にこの4月から2年間の移行期間がスタートし、文部科学省が作成した移行用の教材や指導書が各学校に配布されている。
 小学校での英語教育は、具体的には、5、6年生を対象に週1回実施されてきた「外国語活動」が3、4年生に早まる。5、6年生は「教科」として英語を学習し、授業時間はほぼ倍に増える。簡単な文法のほか扱う単語数も増えるという。
 これには問題が多い。教科として適切に英語を教え、妥当な成績評価ができる教員をどう確保するのか。十分な数の教員を養成する時間的余裕もないまま、見切り発車をする恐れが強い。英語教育を専門とはしない教員に、学習者にとって重要な初歩を任せれば、つまずきの原因となる懸念も指摘されている。
 激変する英語教育のもう一つは大学入試だ。文科省は20年度から現在の「大学入試センター試験」に代わって「大学入学共通テスト」を実施する。英語の試験は英語検定やTOEICなど複数の民間試験を導入する。
 「読む、聞く」という能力に加えて「書く、話す」という四つの技能を測るのが目的とされる。しかし、これも問題が多い。高額な受験料の負担だけでなく、異なる試験で受験生の能力を測るのは、客観的な公平さに欠ける。
 入学試験で4技能の全てを測る必要はない。英語力の基本となるのは誰もが認めるように読解力だ。入試で試すのは読む力と書く力だけで十分だろう。話す能力、聞く能力は、入学後に各大学が充実した教育を行えばよい。
 英語教育の改革は、経済界からの強い要求が背後にあったといわれている。高度に英語が使える人材を即戦力として獲得したいという財界の論理が、学校英語の在り方にさまざまな影響を与えてきた一面は確かにある。
 従来、読解中心だったのがコミュニケーションに重点が移って、既に30年近くに及んでいる。この間、会話を重視した各種の改革が教育現場で進められてきた。しかし、現実には英語能力は低下しているという指摘が、大学側から根強くある。
 近い将来、新指導要領に基づく小学校英語が十分な成果を挙げなければ、さらに英語教育の低学年化が進む事態になる。今、必要なのは、これまでの方法の長短を詳しく検証し、今後の在り方を練り直すことではないか。
 英語は日本人にとって極めて難しい言語で、習得には膨大な時間がかかる。読解に重点を置いた方法はむしろ習得への近道であり、決して否定すべきものでないことは、言うまでもない。


2018年05月04日金曜日


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