社説

大使館エルサレムに/米国任せでない中東和平を

 「2国家共存」の中東和平の理想が、また遠のいたのではないか。残念ながらそう判断せざるを得ない。
 トランプ米政権が14日、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転した。昨年12月にエルサレムを首都と一方的に認定。具体的な行動に踏み切ったことでパレスチナの怒りが爆発した。
 14日はイスラエルが建国を宣言し、ちょうど70年目の記念日に当たる。同時にパレスチナにとっては土地を奪われ長い苦難の道のりが始まった忘れられない日でもある。
 パレスチナ自治区のガザなどでは大規模な抗議デモがあり、イスラエル軍と衝突。多数の死傷者が出ている。極めて憂慮すべき事態である。
 エルサレムはユダヤ教、イスラム教、キリスト教のそれぞれの聖地だ。その帰属問題は中東和平の核心といえる。
 イスラエルは「不可分の永遠の首都」としてエルサレムを実効支配するが、国連は首都宣言を認めていない。各国もはれものに触るようにしながら当事者同士の危ういバランスを見守ってきた。
 それだけに、東エルサレムを将来の独立国家の首都に位置付けてきたパレスチナの屈辱と落胆は当然だろう。
 イスラエルとパレスチナが互いの存在を認め、パレスチナ自治が始まった歴史的なオスロ合意(1993年)以降、米国は中東の「仲介役」を自認していたはずだった。
 にもかかわらず、トランプ政権になってイスラエルに肩入れする立場に転じたことが全ての元凶である。米国自身が主体的に関わってきた国際的信義を破棄する行為は到底容認できない。
 国連は昨年末、米国による首都認定の撤回を求める決議案を圧倒的多数で採択した。米国はパレスチナの人々の非難や国際社会の指摘を受け止め、打開に動くべきだ。
 しかし、完成間近とされていた和平交渉への米国の仲介案も、ここに至ればさしたる意味を持たない。交渉をむしろ困難な状況に追い込む一連の暴挙を前に、パレスチナは米国を「仲介役」とはみなしていないからだ。
 トランプ氏の行動は今秋の中間選挙に向けた親イスラエル派の支持獲得が狙いとされる。中東の歴史の琴線に触れる問題すら取引の材料にする姿勢では関係修復は困難だ。
 米政権の中東外交の関心はイランの封じ込めに移っているとされる。ここでも国際社会の協調路線に背を向け「イラン核合意」から離脱。独自の中東戦略に乗り出している。パレスチナ問題は視野に入っていないかのようだ。
 であるならば、米国任せではない新たな和平交渉の枠組みを模索する必要があろう。
 日本を含む国際社会が広範な和平交渉の仲介役に参加することをパレスチナ側も望んでいるという。難民支援の役割などを通じ中東和平に貢献すべき時ではないか。


2018年05月16日水曜日


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