社説

GDP9期ぶり減/将来不安解消し内需喚起を

 2年余にわたったプラス成長に一服感が現れてきた。
 内閣府が発表した2018年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0.2%減、同じペースの下落が1年続くと仮定した年率換算で0.6%減となり、9四半期ぶりでマイナス成長となった。
 一時的な「足踏み」との見方がある一方、株高、円安基調で景気回復局面が続いていた日本経済がついに減速し始めたとの指摘もある。今後、内需の動向や賃上げなどを注視する必要がある。
 1〜3月期は、GDPの約6割を占める個人消費が、悪天候の影響を受けるなどして前期比0.001%の微減。住宅投資や企業の設備投資もマイナス成長で相変わらず内需に力強さを欠いた。
 頼みの輸出は、アジア向けスマートフォン用電子部品などの不振が響き伸びが鈍化。全体として前期の2.2%増から急減速し、0.6%増にとどまった。
 賃金は緩やかに上昇している。物価を調整した実質雇用者報酬は0.7%増と比較的高めの伸びとなった。
 これまで長期にわたり「景気回復」を示す指標が示されながら、生活者にその実感は乏しかった。賃金が伸び悩み、結果として消費意欲に結び付いていなかったからだ。
 政府による賃上げ要請が影響したのか。今春闘では大企業を中心に前年水準を上回る回答が相次いだ。特に賃上げをリードする自動車、電機など大手が5年連続のベースアップで勢いを付けた。
 まだ不十分とされる地方の中小企業などに波及させなければならない。4〜6月期以降の消費持ち直しにつながる好循環を築けるかが焦点となりそうだ。
 政府は「景気は緩やかに回復しているとの認識に変わりはない。海外経済の回復が続く中、政策効果で雇用・所得環境の改善が続いている」と減速感を打ち消す。
 16日の東京株式市場は、GDPが市場の予想を下回ったため、売り注文が一時広がった。今回、輸出がいくらか鈍化しただけでマイナス領域に足を踏み入れたのは、外需に頼る日本経済のひ弱さを図らずも示したと言える。
 米国をはじめとした世界の景気回復がどこまで続くかは見通せない。海外リスクはむしろ増大している。米中の貿易摩擦は設備投資のマインドを冷やす。イランなど中東情勢の緊迫化に伴う原油高も既に影響が出始めている。
 国内で持続可能な経済を再生していくためには、まず政治が国民の将来不安に真剣に向き合わねばならない。
 少子高齢化に伴う社会保障制度や、人口減少の中で成長戦略をどう描くかに明瞭な答えを示しきれていない。働き方改革も拙速に結論を急いでいるように映る。政治が不安をさらに募らせるなら景気の浮揚は期待できまい。


2018年05月17日木曜日


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