社説

医学部定員減へ/医師偏在の解決が先決では

 厚生労働省が全国の大学医学部の定員を削減する方向性を打ち出した。医療従事者の需給に関する検討会の専門部会が2022年以降、定員を削減する方針を承認した。
 医学部定員は06年にそれまでの抑制策から増加策に転じた。その後も地域の医師確保の観点から定員の増加を図ってきた。しかし、東北地方をはじめとして、地方の医師不足の問題は、なお解消には程遠いのが現状だ。
 削減を議論する前に、地域医療を充実させる具体的かつ実効性のある方策を実現に移すのが先決ではないか。医師の地域的な偏在だけでなく、診療科における偏在の問題も残されたままだ。
 地方の医師不足の解消に向けては、国会に医療法などの改正案が提出されている。定員削減を巡る検討は、改正案の成立の後、その実効性が実際に確保されてからでも遅くはない。地域医療に不安を与えるような性急な削減は避けるべきだろう。
 厚労省の推計によると、全国の医学部の定員が現状の約9400人のまま維持されると、28〜33年には需給が均衡し、医師不足は解消すると見られる。その後は需給が逆転するため、卒業が28年以降となる22年の入学者から削減する必要があるという。
 確かに、医学部学生の定数は、緊急医師確保対策や学部の新設などで約10年前より1800人近く増えた。近い将来、医師不足が解消するという厚労省の推計は間違っているとは言えない。
 ただ、医師の総数が充足したからと言って、地域間での医師の偏在が容易に解消されるわけではない。現に、厚労省は「医学部の定員が抑制から増加に転じて以降、むしろ地域間での格差が広がっており、その解消が急務」と分析している。
 厚労省のアンケートによると、医師の44%が地方で勤務する意思があると回答。それにもかかわらず、実際には勤務に結びついていない。理由は労働環境や仕事内容の過酷さ、子どもの教育に関する不安などだ。
 改正案は、医師確保のための都道府県の体制強化を中心に、研修病院の指定権限の国から地方への移譲、入学者の地域枠を設定するよう要請する権限の創設など、多様な対策を盛り込んだ。
 目新しいのは、医師不足に悩む地域で一定期間、勤務した医師を「社会貢献医」として認定し、各種の優遇策の対象とする制度の導入だ。効果については賛否があるが、地域医療への貢献の動機付けになり得る新たな制度と言っていいのではないか。
 医師不足に悩む地域の住民はこれまで長い間、都市住民に比べると、健康面での不利益を受けてきた。地域医療に従事する医師など医療従事者の不安を解消し、医療を充実させるさまざまな対策をまずは実行したい。


2018年05月25日金曜日


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