社説

終盤国会の攻防/「強行」あってはならない

 国会は終盤に入り、与野党の攻防が激化している。またぞろ目立ってきたのは、自民党が数の力でごり押しする「強行」路線だ。
 今国会最大の焦点の「働き方改革」関連法案を巡り、与党は衆院厚生労働委員会で野党の抵抗を押し切って可決した。1年前の「共謀罪」法案以来の採決強行である。
 法案を巡っては、日本維新の会、希望の党と修正合意した。法案採決へ一部野党を協力勢力として取り込み、野党や世論の強行批判をかわす狙いは明らかで、小手先の修正としか映らない。
 政府、自民党が優先して取り組むべきは一連の不祥事に関する国民への説明である。財務省の森友文書改ざん、元首相秘書官が官邸で面会に応じた加計学園問題は真相解明にほど遠い。特に加計問題を巡る疑念は深まるばかりだ。
 28日の衆参両院予算委員会集中審議での首相答弁は説得力を欠いた。獣医学部新設を巡る愛媛県文書に記された加計孝太郎理事長との「面会」を改めて否定したものの、質問に正面から答えず、はぐらかす場面が目立った。
 野党側が求める加計理事長や中村時広愛媛県知事らの国会招致に応じる姿勢は全くない。非がないのなら自身の主張を証明するためにも認めるべきではないか。
 自民党は「これ以上(野党が)期待するようなことはない」(二階俊博幹事長)などと問題の幕引きを図る。さらに6月20日までの国会会期の延長論も浮上。働き方関連法案の衆院採決を31日に先送りしたことは丁寧な国会運営の演出であり、同法案やカジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法案を確実に成立させるのが狙いだ。
 政権は今国会を「働き方改革国会」と位置付けてきた。その手前、目玉法案が頓挫すれば、首相の求心力低下が浮き彫りになる。首相は一連の不祥事に関し「うみを出し切る」と誓ったのと裏腹に、秋の自民党総裁選を有利に戦うための実績づくりを優先しているのが内実だ。
 終盤国会と並行して地方では重要な選択がある。6月10日投開票の新潟県知事選だ。新人同士の与野党対決の構図となっており、安倍政権への「審判」の側面がある。
 新潟では2016年の参院選と知事選で、脱原発を掲げて野党が共闘し与党候補を退けた経緯がある。結果によっては党内の「安倍離れ」が加速する可能性がある。
 30日には首相と野党党首の党首討論が1年半ぶりに開催されたが、一連の不祥事に関する議論はかみ合わず、首相は答弁を変えなかった。
 会期延長が熟議に資するのなら歓迎だが、安全保障関連法や「共謀罪」法を巡り強引な国会運営を繰り返してきた政権の体質に危惧を抱く。またも数の力を振りかざせば、将来に禍根を残す恐れのある法が増えるだけではないのか。


2018年05月31日木曜日


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