社説

強制不妊で弁護団/被害者の掘り起こしに期待

 旧優生保護法の下、知的障害などを理由に不妊手術が強制されていた問題で、被害者救済のため、全国被害弁護団が結成された。6月下旬には被害者4、5人が、国家賠償請求訴訟の第3次提訴をする予定だ。救済への道が広がるよう、期待したい。
 弁護団には約40都道府県の計184人が参加した。共同代表の一人、新里宏二弁護士(仙台弁護士会)は「電話相談などで被害者の掘り起こしにつなげたい」と言う。
 この問題に関しては、障害者らが差別や偏見を恐れてなかなか声を上げにくいのが実情だ。自分で意思表示が難しい人もいると聞く。弁護団はそうした「声なき声」の受け皿となり、一人でも多くの被害者を支えてほしい。
 旧法下での不妊手術を巡る裁判は現在4件を数える。宮城県の60代女性が今年1月、国に損害賠償を求める訴訟を初めて仙台地裁に起こしたのに続き、5月には70代の男女計3人が同様に札幌、仙台、東京の各地裁に提訴した。
 こうした動きが広がっていることを、国は重く受け止めなければならない。
 国はこれまで被害者から謝罪と補償を求められても「当時は合法だった」と突っぱねてきた。宮城県の60代女性の訴訟でも国は原告の請求棄却を求めている。
 一方で、原告4人はいずれも、不妊手術の強制は自己決定権などを保障する憲法に違反し、国が長年にわたって被害救済を怠ったと主張している。当然の言い分だろう。
 旧法は「不良な子孫の出生防止」という優生思想を基に1948年に制定され、96年まで約半世紀も存在した。この間、知的障害や精神疾患を理由に不妊手術が認められてきた。手術を受けたとされるのは約2万5000人、うち「本人の同意なし」は約1万6500人に上る。
 人の命に優劣をつけ、選別する。あからさまな差別であり、著しい人権侵害であることは論をまたない。
 被害者らは高齢となっており、救済は「待ったなし」の状況だ。国は裁判の結果を待たず、早期救済を図る責務があるのではないか。
 基本的人権を定めた日本国憲法の下で、不妊手術が続いた現実を社会全体が受け止める必要もある。東京であった弁護団の結成大会では、東京都の精神科医岡田靖雄さん(87)が30代の女性患者への強制不妊手術を申請したと告白し「関わった精神科医も責任を負うべきだ」と訴えた。
 弁護団の声明では、不妊手術が容認されてきた経緯のほか、優生思想の問題点や現状を検証する委員会を設置するよう国に求めている。
 形式的な救済だけでこの問題に幕を下ろすのなら、過ちは繰り返される恐れがある。差別を生む優生思想が社会から消えたわけではない。差別の根幹を検証し、省みることが大切だろう。


2018年06月01日金曜日


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