社説

カジノ法案/依存症対策がまだ不十分だ

 カジノ解禁を柱とする統合型リゾート施設(IR)整備法案には、数多くの疑問や問題が残されたままだ。法案の内容について、国民の理解が十分に深まったとは到底言えない。そもそも、国会を延長してまで成立を急ぐべき法案なのかという疑念も指摘せざるを得ない。
 法案は衆院を通過し論戦の舞台は参院に移っている。衆院内閣委員会での審議はわずか18時間で、政府与党は審議を打ち切って採決を強行。今国会での成立を図るが、さまざまな疑問にもっと丁寧に向き合うべきだろう。
 カジノは刑法が禁じている賭博の場となる。それを合法化するのがIR法案だ。安倍晋三首相は「世界中から観光客を集める」として、成長戦略の柱に位置づけている。
 しかし、ギャンブルに頼る観光や経済の振興が、果たしてまっとうな成長戦略と言えるのだろうか。カジノがない現在でも、日本を訪れる外国人観光客は過去最高を更新し続けている。
 賭博を例外的に合法化とする要件として、法務省は「目的の公益性」「射幸性の程度」、依存症対策などの「副次的弊害の防止」など、8項目を掲げた。
 これを受ける形で、IRの基本理念を定めたIR整備推進法は付帯決議で、8項目の観点から刑法との整合性が図られるよう「十分な検討を行う」と明記したはずだ。しかし、政府はこれらの要件について国会で踏み込んだ議論は避けてきた。
 IR法案にはカジノ事業者が利用客に賭け金を貸し付ける制度も盛り込まれた。競馬など既存の公営ギャンブルでは許されていない制度だ。政府は日本人客には一定の預託金を求めた上で貸すと説明するが、事業者は預託金を超えて貸すこともできる。
 客が借金で賭博を続け、借金を返すためにさらに深みに陥る恐れもある。多重債務やギャンブル依存症を助長しかねない制度ではないか。
 法案では、ギャンブル依存症への対策として、日本人客の入場はマイナンバーカードで本人を確認し、「週3回かつ28日間で10回」「入場料6000円」などと規定。政府は「世界最高水準の規制」と胸を張る。
 しかし、年間120日まで入場できる仕組みが、どれほど依存症防止に実効性があるのか明らかではない。政府からはこれまで説得力のある説明はなく、はなはだ心もとないと言わざるを得ない。
 法案では、法成立後に国会に諮らず、政令や省令、規則で定める項目が331項目に上ることも分かった。審議が深まらない一因でもある。
 カジノ解禁に対する不安や疑問は根強く、その払拭(ふっしょく)のためには与野党ともに十分な審議を尽くす必要がある。世論に背を向けたまま、急いで成立を図るような法案ではないのではないか。


2018年06月24日日曜日


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