社説

日欧EPA/国内産業の底上げ図りたい

 日本と欧州連合(EU)が署名した経済連携協定(EPA)の早期発効に期待が膨らんでいる。世界の貿易総額の4割を占める自由貿易圏が生まれる意味は大きい。
 EU、日本にも照準を当てるトランプ米政権の保護主義的な通商交渉を巡っては、EUとの間で正面衝突を避ける緩和の動きが出てきている。
 日欧が自由貿易の旗を掲げ利点と結束を訴え続けることは、世界の貿易摩擦を乗り越える大きな力になり得よう。
 日欧EPAが発効されれば輸入関税の引き下げ・撤廃でワインやチーズ、パスタといった欧州の代表的食品、木材が安く買えるようになる。EUがこれまで高関税を課してきた日本車の輸出拡大も見込まれている。
 ただ、米国を除く環太平洋連携協定(TPP)と同様に消費者や輸出業者が恩恵を受ける分、国内農家など生産者は厳しい国際競争にさらされる。日本側の関税撤廃率は94%。売り上げ減などの影響は避けられまい。
 今のところ来年3月までの発効を目指す見通しだが、TPPと間を置かず立て続けに発効に至る可能性もある。経営基盤の弱い生産者への配慮は不可欠だろう。
 政府は、TPP関連政策大綱に追加する形で農家の経営安定化、赤字穴埋め対策などを既に進めているが、生産現場の懸念は解消されたとは言い難い。国内対策に万全を期した上で、産業全体の底上げを目指すべきだ。
 政府の試算によると、日欧EPAの発効による経済押し上げ効果は年約5兆2000億円とされる。
 一方、輸入品流入による影響を示す国内生産減少額は農林水産物全体で年最大1100億円。構造用集成材が371億円、牛乳・乳製品が203億円などと見込まれる。
 試算は国内対策の効果が行き渡り生産量を維持できることが前提となっている。甘い算定と言わざるを得ない。
 例えば、住宅建築の集成材は輸入量の9割近くがEU産。日本市場での価格決定力が強く、国産材生産地への影響は小さくない。欧州チーズに日本は高い関税をかけてきた。段階的に引き下げ、撤廃まで16年とはいえ、北海道の酪農家やチーズ生産者の経営圧迫は必至だ。きめ細かな対応が欠かせない。
 しかし人口約5億のEU市場が眼前に広がると考えれば、国内業者が攻めに転じる好機とも言える。日本酒、緑茶、しょうゆなどの関税は即時撤廃、欧州で評価が高いホタテは8年目の撤廃だ。
 技術と品質に加え、ブランド戦略を持てば欧州に打って出ることは不可能でない。政府は国内の環境整備や情報公開を徹底して進めてほしい。
 近く始まる米国との通商協議で成果が得られるかは未知数だ。持続的な経済発展の礎を固めるためにも多国間の連携を確かなものにしたい。


2018年07月28日土曜日


先頭に戻る