社説

自民党総裁選/活発な政策論争が聞きたい

 9月に行われる自民党の総裁選は、現総裁の安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなる見通しが強まっている。正式な立候補の表明はまだだが、前回、無投票だった総裁選は、6年ぶりの選挙戦となる可能性が高い。
 共同通信の調査などによると、現段階で党所属の国会議員の7割以上が安倍首相支持を明らかにしている。「安倍3選」への流れが強まっている中で、国会議員票と同数の党員・党友による地方票の動向が注目される。
 2012年の総裁選では石破氏が地方票で圧勝したものの過半数には届かず、国会議員のみによる決選投票で安倍氏が逆転勝利した。これを機に自民党は14年、地方票を重視する制度に転換。国会議員票と地方票を同数とする制度とした。
 01年の総裁選では小泉純一郎氏が圧倒的な地方票を獲得し、勝ち馬意識の強い議員が雪崩を打って小泉氏支持に回った例がある。今回の総裁選では議員の投票行動に影響を与えないよう同時に開票される。地方票の行方が結果を大きく左右する重みを持つ。
 「多弱」の野党しか存在しない政治状況で、事実上、首相を選ぶ選挙である。党員だけでなく、国民一般に対して分かりやすく政策を訴える必要がある。総裁選は今後の政治の方向性を打ち出し、国民に理解を求める貴重な機会でもある。
 石破氏は最近の講演で、党の綱領を引用しながら「多様な組織と対話調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させているか、問う必要がある」と繰り返し述べている。「安倍1強」の批判が強い中で、石破氏のそうした意見は傾聴に値しよう。
 政策論争は長期にわたる安倍政権の功罪を検証する役割を担う。諸政策のうちで両氏の違いが最も分かりやすいのは経済政策だろう。
 大規模な金融緩和を主要な内容とする安倍内閣の経済政策アベノミクスは、最近ではその副作用が幾つも指摘されるものの、一方では大幅な雇用増を生んでいる。企業収益は好調を続け、税収は過去最高を記録した。
 一方、石破氏が主張する経済政策は、アベノミクスとはおおむね対立すると言ってよい。具体的には、金融緩和の出口戦略を模索し、金融引き締めに転じ、さらには緊縮財政路線を取って財政の健全化を図ろうという内容だ。
 金融政策のプラス効果が地方経済に及んでいない不満が地方に根強い。今後の経済運営の在り方を巡って真剣な議論を待ち望むのは地方在住者の偽らざる心境でもある。
 外交、安全保障、医療、年金、教育など諸論点についての政策論争は、総裁選後の党の活性化につながる。投票権を持つ党員の背後には多数の国民がおり、総裁選を注視している事実に留意し、選挙戦に臨んでもらいたい。


2018年08月02日木曜日


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