社説

虐待防止の緊急対策/児童相談所の強化急ぎたい

 「おねがいゆるして」。ノートに反省文を残して東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が虐待死した事件を受けて、政府は児童虐待防止の緊急対策をまとめた。児童相談所(児相)で相談や支援に当たる児童福祉司を2022年度まで2000人増やす方針などを打ち出した。
 児相への虐待相談は年々増加し、16年度は12万件を超えた。統計を取り始めた1999年度の10倍以上だが、児童福祉司の人数は約2.6倍にとどまり、昨年4月現在で約3200人だ。多忙を極める児相の体制強化は喫緊の課題で、対策を急がなくてはならない。
 心中を含めた子どもの虐待死は、年間約80人に上っている。児相は家族のプライバシーに深く関与し、場合によっては子どもの命に関わる重大な事案も扱う。いかに職員の専門性や資質を高めるのか、質の強化に向けた取り組みも欠かせない。
 児童福祉司は、児相で虐待や非行などの問題解決に当たる公務員だ。国家資格ではなく、社会福祉士や大学で心理学を学んで1年以上の実務経験がある人などを自治体が任用している。
 多様なケースに的確に対応するには、一定の経験が必要だが、異動などで勤務年数が3年未満の職員が4割を占めるとされ、支援の継続の難しさや専門性の不足が指摘されてきた。どう人材を確保し、適切な育成を図るかが今後の課題となる。
 緊急対策では、児相側が子どもに会えず、安全が確認できない場合は立ち入り調査を実施するとルール化した。保護者の意に反することもあるだろうが、まずは子どもの安全確認、安全確保を最優先する必要がある。
 児相と警察の情報共有の強化も盛り込まれた。(1)虐待による外傷やネグレクト、性的虐待がある(2)通告を受けた後、48時間以内に子どもの安全確認ができない(3)一時保護などから家庭復帰した−といった情報は双方が共有するというルールを明確化した。
 さらに、子どもが転居した場合、緊急性の高いケースでは担当する児相が対面で引き継ぐとしている。いずれも今回の事件を踏まえての対策だが、児相の対応に限界があるのも事実だろう。
 児相は、子どもを一時保護するなど問題のある家庭に介入する一方で、親子関係を修復する支援も担う。子どもの安全を確保し、怒鳴り込んでくる親に対応し、親と信頼関係も築く。児相の職員に全てを求めるのは無理がある。
 警察や弁護士、市町村などと連携を図るだけでなく、深刻なケースへの介入は主として警察が担い、支援は児相や自治体が担うなど機能の分化が必要ではないか。
 悲劇を繰り返さないよう虐待防止に実効性のある仕組みをどう構築するのか、具体的な議論が求められている。


2018年08月03日金曜日


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