社説

東京医大女子差別/背景にあるのは医師不足だ

 東京医科大が2006年度入試から女子受験生と3浪以上の男子受験生に対して得点を調整、合格者を抑制していた事実が明らかとなった。不正入試問題を調査してきた内部調査委員会が経緯などについて、7日、記者会見を開いて公表した。
 何よりも客観的な公平性が担保されるべき入試で、大学幹部の裁量による不正な操作が行われてきた事実は、受験生への裏切りであるだけでなく、大学への一般の信頼をも失墜させるものだ。
 女子と3浪以上の男子に対する差別的な扱いは、それぞれ目的が異なる。3浪以上の学生は、現役で合格した学生と比較すると、医師国家試験の合格率が相対的に低いため合格者数を抑制した。
 国家試験の合格率の高さを誇りたいのは、単なる私立大の商業主義にすぎない。現役合格なのか浪人なのかは、医師としての適性の有無とは何ら関係がないという当然の事実を指摘しておきたい。
 女子の場合は、出産や育児による休業があるほか、場合によっては離職するケースが少なくないため、系列病院を抱える大学として男性医師を多く確保したいという目的からだ。いずれも大学側の都合を優先した独善的で差別的な対応と言える。
 より悪質で問題の根が深いのは、女子に対する差別だろう。確かに、医療現場の実態として、女性医師は勤務の負担が軽い眼科や皮膚科などに偏りがちなのは事実だ。系列病院に医師を派遣する大学としては、外科系を担う男性医師を一定数、確保したいという事情は理解できる。
 しかし、まずは女性医師が出産や育児を負担に感じない働きやすい環境を整えるのが先であり、最初から女性を排除する対応は論外だ。同時に、男女を問わず、過酷な長時間勤務が日常になっている医師の労働環境を改善するのが何より求められる対策だ。
 問題の根底にあるのは医師不足の現状である。大都市圏でさえ、全体として医師が不足気味で、女性医師が離職すれば、病院は代わりの医師確保に奔走する。多くの勤務医が長時間勤務を強いられている現実もまた、明らかに医師不足によるものだ。
 1986年、当時の厚生省は医学部定員を最低でも10%削減する目標を掲げ、93年にも再度、同様の提言を発表している。しかし、特に地方の医師不足問題で風当たりが強まり、一転して2006年に定員増を認めた。その後、医大の新設を認めたものの、最近では、再び定員削減の検討に着手している。
 官庁によるずさんな医師需給の見通しによって、地域医療はもとより、医療現場全体が苦境にあえいできたと言えよう。今回の不正入試は一義的には東京医科大の体質による部分が大きいが、根っこにあるのは医師不足である事実は重ねて強調しておきたい。


2018年08月08日水曜日


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