社説

非核化合意2カ月/北の包囲網引き締め直しを

 非核化が一向に進まない。国際社会を振り回す北朝鮮の身勝手なやり口が再び頭をもたげてきた。経済制裁の手綱を締め直さねばならない。
 国連安保理の専門家パネル報告書は、北朝鮮の「核開発継続」を明記した。いら立つ米政権はポンペオ国務長官の再派遣も検討する。米朝会談から間もなく2カ月。廃棄の合意は早くもかすんでいる。
 すでにポンペオ氏は先月、北朝鮮による核物質生産の継続を議会公聴会で証言した。米紙も大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を報じている。「さもありなん」という成り行きである。
 しかし、先日の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の会合に出席した李容浩外相は「われわれの善意の措置に対し国際社会は相応の対応をすべきだ」と悪びれることなく制裁緩和を要求。各国の外相らと積極的に会談した。
 その後発表された議長声明は、非核化に向けた努力を続けるよう関係国に促したものの、当初案にあった「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を求める内容は削除された。北朝鮮の反発を避けたとみられ、融和に傾くASEANの姿勢がにじむ格好となった。
 非核化に対する北朝鮮と日米など各国の認識の隔たりは、米朝会談前よりも深まっているのではないか。
 米国は核施設の査察や申告を前提に、非核化の行動を迫る立場を崩していない。これに対し北朝鮮は自国に都合のよい「善意の措置」を繰り出しては「同時並行の行動に踏み出さないのは米国」と非難。一方的な核放棄には応じない態度を鮮明にし始めた。
 善意の措置の最たるものは米朝合意の一つ「朝鮮戦争時の米兵の遺骨返還」だった。北朝鮮は7月、休戦65周年の記念日に遺骨55柱を米国に返還した。平和体制構築の一歩とし「終戦宣言」につなげる思惑だったに違いない。
 その先には米国による体制保証や平和協定の締結、在韓米軍の撤退なども視野に入っていよう。しかし非核化が進まない段階で、米側が策に乗ることはあり得ない。核実験場の爆破やミサイル発射場の解体などを含めても「終戦宣言」の合意と釣り合う措置とは到底言えまい。
 気になるのは「終戦宣言」に発言力を持つ中国の王毅外相が北朝鮮に理解を示し、米朝の歩み寄りを促した点だ。中国の出方次第では、この問題をてこに事態が前に進む可能性は捨てきれない。
 安保理報告書では、北朝鮮が海上で船舶の積み荷を移し替える「瀬取り」による密輸の手口を巧妙化させたり、イエメンやリビアへ小型武器の密輸出を試みたりしている。
 非核化問題は多くの国を巻き込み揺れ動く。北の包囲網が骨抜きになっているとしたら一刻も早く制裁の抜け穴を埋めなければならない。国際社会の結束が問われる時だ。


2018年08月10日金曜日


先頭に戻る