社説

日米貿易協議/多国間の枠組み重んじたい

 日米の貿易観の違いが改めて鮮明になった。互いの利益をどう認め合い、自由貿易の秩序を貫けるか。ここからが正念場の「戦い」になろう。
 日米の閣僚級貿易協議(FFR)の初会合は、自由貿易協定(FTA)を念頭に2国間交渉の開始を求める米国と、多国間の枠組みを重視する日本の間で折り合わず、結論を次回以降に持ち越した。
 入り口の交渉形式で双方が譲らないのは、そこが全ての分岐点になるからだ。
 貿易赤字の解消を目指す米国は、農業、自動車など個別分野で成果を勝ち取りやすい2国間交渉に日本を引き込みたい。環太平洋経済連携協定(TPP)が年明けにも発効するが、離脱した米国は関税引き下げの恩恵を受けない。価格競争力は格段に劣る。
 日本は協議で「ならば米国がTPPに復帰するのが最善の道」という主張を貫いた。トランプ大統領自身の決断でTPPを去った以上、方針転換は当面あり得ないが、将来戻る選択肢は残る。「席を空けて待っている」というメッセージは共に枠組みを築いてきた日本の真意でもあろう。
 警戒するべきは、米国が検討する自動車・部品への25%の高関税だ。発動の場合の影響は計り知れない。日本はもちろん米国内の業界からも反発の声が上がる。追加関税の影響額は大手メーカー6社の総計で年2兆円近くに及ぶという試算がある。国内景気を冷やす要因になりかねない。
 協議では、日本が現地生産による雇用への貢献を強調し対象から外すよう求めたが、発動回避を引き出すには至らなかった。米国が追加関税をちらつかせ、適用除外を認める見返りに農産品の輸入拡大を迫る強硬策に出るとしたら、公正な貿易ルールに反する。断じて認められない。
 「報復の応酬は誰も望んでいない」というのが政府の基本姿勢だ。しかし、場合によっては対抗策を打ち出し、自国産業を守る毅然(きぜん)とした姿勢が求められる。
 米国は保護主義的政策で中国との貿易戦争に突入。欧州連合(EU)とも力づくでやり合う。日本は真正面から組み合いつつも、自由度の高い多国間貿易の枠組みに米国を引き戻す努力もすべきだ。
 協議では、課題の大方を9月の次回会合に先送りしたが、両国の貿易拡大のほか、中国を念頭に不公正取引や知的財産権侵害の問題で協力することでも合意した。TPPには知財権取り締まり規定も含まれる。復帰が難しいならTPPルールを準用した枠組みで協定を結ぶ方法もあろう。
 米中間選挙が迫り、交渉はより困難な局面に入る。日本は、TPPに加えEUとの経済連携協定(EPA)も主導してきた。増え続ける新たな自由貿易圏の輪は交渉突破の力になろう。圧力をどうかわすかに頭を悩ますだけでなく主体的に提案し、厳しい協議を乗り越えてほしい。


2018年08月14日火曜日


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