社説

金足農決勝進出/悲願の「白河の関越え」期待

 東北の球児たちが挑んできた深紅の大優勝旗まであと1勝に迫った。きょうの決勝に悲願の「白河の関越え」を期待したい。
 甲子園球場(兵庫県西宮市)で開催されている第100回全国高校野球選手権大会。秋田代表の金足農がきのう、準決勝で日大三(西東京)に2−1で勝利し、決勝へと駒を進めた。
 秋田県勢の決勝進出は第1回大会(1915年)の秋田中(現秋田)以来、実に103年ぶりだ。このときは京都二中(京都)に敗れて涙をのんでいる。100回という記念すべき今大会で、大旗をぜひつかみ取ってほしい。
 東北勢としては、仙台育英(宮城)や東北(同)、光星学院(青森、現八戸学院光星)などが夏に8回、春に3回の計11回、甲子園で頂点を懸けて戦ってきた。だが、いずれも惜敗を喫し優勝を逃している。12度目の今度こそとの思いは、東北に共通する願いでもある。
 今回の金足農の躍進を大会前、誰が想像しただろう。前評判は決して高いとは言えなかった。「雑草軍団」と称される粘り強さで、優勝候補の一角と目された横浜(南神奈川)など強豪校を相手に劇的な勝利を重ねてきた。
 金足農はエースの吉田輝星(こうせい)投手を軸にチームが一丸となった戦いぶりが印象的だ。吉田投手は甲子園で5試合を1人で投げ抜き、準決勝を除く4試合はいずれも2桁の奪三振を記録。攻撃は選手たちが「伝統であり一番の武器」と言うバントで好機を作り、得点に結びつけてきた。
 金足農は記録的な暑さとなった今夏、秋田大会から一度も選手交代をせず、3年生だけの「9人野球」で勝ち上がってきた。しかも、強豪校には他の都道府県からも優秀な選手が集まるのが当たり前の時代にあって、メンバーは全員が地元出身だ。県民が「秋田の誇り」と話しているのもうなずける。
 秋田県が2011年から取り組む「県高校野球プロジェクト」も後押しした。県教育委員会や高校野球関係者が一体となり、高校野球の技術力アップを図ってきた。
 秋田県勢は夏の甲子園大会で1998〜2010年に13年連続で初戦敗退と低迷。プロジェクトでは社会人チームの監督経験者らを招き、野球理論や練習法を学ぶ機会を提供してきた。金足農もプロジェクトに積極的に参加してきたというから、県を挙げての取り組みが奏功した面もあるに違いない。
 金足農は今大会で8強に勝ち残ったチームでは唯一の公立校だ。出場校では唯一の農業高校で、選手たちは普段は畜産実習などに汗を流す。他の公立校、実業校の球児たちにも励みになるはずだ。
 決勝の相手は2度目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)。どちらが勝つにしろ、歴史に残る試合となる。


2018年08月21日火曜日


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