社説

解体進む仮設住宅/十分な配慮 最後の一人まで

 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県で、計約5万3000戸が建設された応急仮設住宅の解体が進む。復興の進展とみるのは早計だろう。今なお6000人超がプレハブ仮設で暮らす現実を忘れてはならない。
 最大の津波被災地となった石巻市は今夏、夏祭り行事を復活させた地域が目立つ。仮設住宅団地の解体が進み、跡地が再び公園として利用されるケースが増えたからだ。
 同市は被災3県の自治体で最多の134団地7297戸の応急仮設住宅を整備した。1日現在の入居戸数は54団地409戸。ピーク時に1万6788人に上った入居者は825人(4.9%)になった。市は2018年度中に団地数を17に集約する方針だ。
 安倍晋三首相は2日、同市の仮設南境第7団地を視察。国の復興・創生期間が終わる20年度までに岩手、宮城両県の応急仮設住宅を解消させると表明した。震災から丸10年の東京五輪の年、計約3万6000戸が姿を消す。
 阪神大震災で応急仮設住宅がゼロになったのは発生から5年後だった。その倍の時間を要することが、東日本大震災の被災形態の多様性、特殊性を物語る。
 震災で全壊した家屋は約12万戸。想定される首都直下地震、南海トラフ巨大地震による被害は5〜20倍と予想される。発生直後に直面する住まいの対応は災害復旧の最重要テーマでもある。
 震災を機に、仮設住宅を巡る政策は大きく変わった。
 震災発生時、災害救助法が定める応急仮設住宅の建設コストの一般基準は1戸当たり約239万円だった。現実は風呂の追い炊き機能や防寒の工事の追加で約730万円(宮城県)に膨らんだ。
 国は昨年、建設費の上限を約551万円に引き上げたほか、面積要件を廃止。地域の実情に柔軟に対応できるよう設置基準を大幅に緩和した。
 6月に成立した改正災害救助法は、民間の賃貸住宅など「みなし仮設」の関連事務を都道府県が政令指定都市に事務委任することを可能にした。震災で膨大な事務作業が県に集中し、被災者の入居が遅れた反省を踏まえた。
 震災から間もなく7年半。震災を教訓とした次の災害への備えが厚みを増す一方、応急仮設住宅の入居者は7月31日現在、岩手、宮城、福島の3県で計6114人に上る。仮設住宅の解体と集約化は入居者の心身に疲弊をもたらす。隣人が、コミュニティーが失われ、取り残されていく過程は新たな被災とも言える。
 仮設住宅の解消は復興の到達点ではなく、プロセスにすぎない。時間がたつほどに被災者が抱える事情は個別化、複雑化している。国や自治体は「最後の一人」に歩調を合わせる姿勢を持ってほしい。取り組みの蓄積は、大災害からの人間の復興を果たす重要な解につながるはずだ。


2018年08月22日水曜日


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