社説

障害者雇用水増し/罪深い旗振り役のごまかし

 国土交通省や総務省などの省庁が40年以上にわたり、障害者雇用促進法で定められた障害者の法定雇用率を水増ししていた実態が判明した。障害者雇用を率先垂範する立場の行政機関の背信行為に憤りを禁じ得ない。
 民間企業は法定雇用率を下回った場合、納付金が求められる。他の規範となるべき中央省庁がこれでは、障害者や企業に示しがつくまい。
 しかも一部では制度の理解不足によるミスではなく、意図的に不正を行っていた疑いがある。行政の信頼を損なう裏切り行為で、制度への信頼も揺らぎかねない。
 障害者の法定雇用率は従業員が45.5人(短時間雇用者は0.5人と計算)以上の企業が2.2%なのに対し、雇用の旗振り役を担う国や自治体は2.5%と高く設定されている。ともに4月に0.2ポイント引き上げられ、さらに2020年度末まで0.1ポイント上乗せされる。
 国は障害者雇用の推進を掲げながら、一方で、雇用率の水増しという不正によって長い間、障害者の就労機会を奪ってきたことになる。各省庁は厳しく責任が問われよう。
 厚生労働省のガイドライン(指針)では、雇用率に算入できるのは障害者手帳を持っている人か、医師の診断書などで障害を認められた人に限っている。だが、各省庁は障害者手帳などを確認せず、障害の程度が軽い職員らを算入していた。
 ずさんな算定がまかり通った要因の一つは、チェック機能の欠如だろう。制度を所管する厚労省は真偽を確認しないまま、各省庁から報告を受けるにすぎなかった。徹底的な調査とともに、再発防止策を早急に検討するべきだ。
 省庁からは「拘束時間が長く、国会対応など突発的な仕事が多いため」などの言い訳が漏れる。責任逃れにすぎず、そうした発言自体、障害者雇用に後ろ向きな省庁の姿勢が透けて見える。
 水増しは地方自治体でも広く行われていた。東北では秋田、宮城、山形、福島の各県などが不適切な算定を認めた。多くの自治体で、指針に沿わない不正が常態化していたということだろう。
 こうした水増し問題への企業側の憤り、反発は大きい。障害者雇用で今後、企業の協力を得られにくくなるのではないかと心配だ。
 省庁に限らず、社会全体が障害者雇用について理解を深めることも大切となる。障害者の職場定着に向けた各種制度が用意されているが、十分に活用されているとは言えない。障害者自立支援法で市町村に設置が義務付けられている「自立支援協議会」も機能していない地域が多い。
 先進地の成功例は行政と企業、支援機関のネットワーク構築の重要性を教えている。雇用率の数値だけにとらわれず、障害者が能力と適性に応じて働き、自立した生活を送れる社会を目指したい。


2018年08月24日金曜日


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