社説

活力なき総裁選/討論の場増やし対立軸示せ

 国のリーダー選びという重みとは裏腹に、論戦が熱気を帯びる気配が感じられない。投票権を持つ党員・党友だけでなく、国民の関心を呼び起こす政権論議が必要だ。
 自民党総裁選は9月7日告示、20日投開票と決まった。既に立候補を表明した石破茂元幹事長(61)に続き、安倍晋三首相(63)=党総裁=が26日、正式に立候補を表明し、両氏の一騎打ちとなる構図が固まった。
 投票まで1カ月を切ったが、国民的な関心はいまひとつだ。首相が「数の力」で党所属国会議員の約7割の支持を固め、優勢とみられていることが大きな要因だろう。
 何よりも両氏が直接、論戦を交わす場が望まれる。自民党に注文しておきたい。事実上の首相選びだ。基本的な政治姿勢や政権ビジョンについて、両氏が徹底討論する場を数多く設けるべきだ。主張の対立軸を国民に発信することは与党の責任である。
 石破氏は今月10日に出馬を表明し、「正直で公正、そして謙虚な政治をつくりたい」と打ち出した。念頭にあるのは、安倍政権で相次いだ不祥事だ。石破氏への支持は、自分の派閥と竹下派の参院側だけ。国会議員票では首相に大きく水をあけられている。
 地方票に支持を広げて活路を見いだそうと、政策テーマ別の討論会開催を求める。森友、加計学園問題に対する安倍政権の姿勢を問い、「1強」批判を巻き起こす狙いだ。
 対する首相は、出身派閥の細田派をはじめ党内5派の支持を受けて圧勝を狙う。立候補表明は当初、通常国会閉会後とみられていたが、西日本豪雨などの影響でずれ込んだという。立候補準備を着々と進めながらも対抗勢力の動向を見極め、ぎりぎりまで表明しない「後出しじゃんけん」にも映り、短期決戦に持ち込む戦略がにじむ。
 首相は憲法改正の機運を再び高めることを狙い、改憲を総裁選の争点に据えるとみられる。自身が提起した9条への自衛隊明記案を秋の臨時国会に提出する意向を示した。
 石破氏は「スケジュールありきだ」と批判。戦力不保持を規定した2項を削除する持論を展開する。緊急性が高い改憲テーマとしては、参院選挙区の合区解消と緊急事態条項の新設を挙げる。
 改憲をはじめ、多様な政策で主張を戦わせるのが選挙戦だ。首相陣営内に討論に消極的な意見があるのは、党員・党友をないがしろにする行為だ。国民の前で正々堂々と討論することが政権を担おうとする政治家の責任である。
 過去の総裁選では党青年局や日本記者クラブ主催の討論会など数回の場が設けられた。首相は告示後の9月11〜13日、ロシアを訪れるため選挙期間は事実上、短縮となる。
 政策討論の機会が減るとしたら、閉塞(へいそく)感に覆われた活力なき自民党の姿が浮き彫りになるだけである。


2018年08月28日火曜日


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