社説

内閣の経済財政運営/覚悟が問われる再生への道

 第4次安倍改造内閣が始動した。残り3年、経済財政運営でも総決算が求められる。
 首相は引き続き「デフレからの完全脱却」を訴えるが、取り組むべきは自立型の経済再生へ道筋をつけることだ。
 2日の東京株式市場の平均株価は、バブル崩壊後の最高値を更新した。為替市場が円安で推移し、追い風を受けた輸出企業の株が買われた。
 この流れは日本経済の実力ではない。米連邦準備制度理事会が利上げを決め、新興国の資金が米国に流入。ドル高・円安が一段と強まり、一部が日本への投資に向かったのが実態だ。波に乗る米経済の影響を一時受けたにすぎず、3日の相場は一転、反落した。
 第2次安倍政権の6年間は景気回復局面が続きながらもデフレ脱却を宣言せず、大規模金融緩和を継続してきた。
 円安の恩恵で大企業の収益は拡大し税収も伸びたが、賃金は上がらず好景気の実感は行き渡っていない。経済政策の停滞と言わざるを得ない。
 9月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況が3期連続で悪化した。約10年ぶりという。トランプ米大統領が仕掛ける貿易協議を懸念し、先行きを危ぶむ経営者が増えている。外圧に左右される日本経済のひ弱な体質をここでもさらしている。
 米中貿易戦争の巻き添えも不安だが、自国の通商交渉でマイナス要因がもたらされるとしたら失政と言える。
 先日の日米首脳会談では、「物品貿易協定(TAG)」締結に向けた関税協議入りで合意したことに危惧が広がっている。野党側は、政府の不用意な判断が対米自動車輸出や農畜産物の市場開放で不利益を招きかねないと指摘。速やかな説明を求めている。
 自動車、農業は共に日本経済の基軸である。攻勢をかわすだけの受け身の交渉でなく、新たな貿易ルールを提案する主体的な姿勢が欠かせない。政権全体で交渉に当たり利益を守らねばならない。
 国内に目を転じれば消費税増税の実施まで1年に迫った。政府は内需への影響を理由に2度先送りしたが、国の根本政策の信頼性に関わる。腹を決め断行すべきだろう。
 任期終盤での景気の腰折れは首相にとって決定的な失点になる。政府は駆け込み需要の反動抑止など大規模な景気対策を打つ構えだ。しかし増税は国の借金償還や社会保障の財源にするのが趣旨。過剰な対策費は理屈に合わない。
 一方で首相は「内閣の最大のチャレンジ」として全世代型の社会保障政策を3年で実現すると明言した。税率10%では社会保障制度の維持や財政健全化に対応できないが、給付と負担の議論は来年の参院選後に先送りするという。
 医療・介護の負担増を伴う改革にどう踏み込むのか。その覚悟なしに、国民の不安は解消できまい。まして自立した経済社会の未来図を描けるわけはない。


2018年10月04日木曜日


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