社説

風疹流行/ワクチン接種積極的施策を

 ワクチン接種で予防できる感染症である風疹が、またも流行の兆しを見せている。首都圏を中心に8月から9月にかけ患者が急増。今年の累計患者数は9月下旬までに770人と、昨年1年間の8倍を超えた。東北ではまだ報告数は少ないが、くしゃみの飛沫(ひまつ)などによる感染力は比較的高く、今後の拡大が心配だ。
 妊娠初期の女性が風疹に感染すると、出生した子どもの眼や心臓、耳などに障害がある先天性風疹症候群(CRS)を発症する可能性がある。
 CRSは母親に風疹の症状がなくても発症する場合があり、治療法はない。前回大流行した2013年には約1万4300人の風疹患者が報告され、13〜14年のCRS患者は計41人に上った。
 わが子がCRSと診断された母親の心情を思えば、原因の明らかな疾患を社会全体で予防することにもっと神経を注ぎたい。妊娠中はワクチン接種を受けられないため、過去に接種を受けていない、または感染したことがなく抗体を持たない、あるいは抗体の値が低い場合は感染を避けるしかない。
 感染拡大を受け、国立感染症研究所は、妊婦の同居家族や、妊娠を望む女性に抗体検査を呼び掛けている。周辺の人たちのワクチン接種が望ましいが、現状のワクチン数に限りがあり、抗体検査後に必要に応じて接種してもらう。
 流行の中心は、今回も風疹ワクチンの谷間世代といわれる30〜50代の男性だ。日本では1977年8月〜95年3月は中学生の女子だけが定期接種の対象で、同世代の大半の男性は一度も接種していない。その後は麻疹おたふくかぜ風疹混合(MMR)ワクチンの選択などで接種率が低い期間があり、06年からは麻疹風疹(MR)混合ワクチンが2回定期接種となった。
 風疹に感染すると、2〜3週間後に発熱や発しん、リンパ節の腫れ、関節痛などの症状が出る。ただ、潜伏期間中にもウイルスは排出され、中には症状の出ない人もいて、自覚のないままウイルスを媒介する恐れがある。
 13年の流行は抗体のない世代が多く集まる都市部の職場での感染事例が相次いだ。妊婦の家族でなくても、人ごとと思わないよう、ワクチン接種に向けた積極的な啓発、助成が求められる。
 昨今は海外渡航者が感染源とみられており、風疹にかかったことのない人は渡航前に予防接種を受け、国内に持ち込まないようにすることも大切だ。
 国は「早期にCRSの発生をなくし、21年度までに風疹の排除を達成する」を目標に掲げている。来年度予算には30〜50代男性に対する抗体検査費用の補助を盛り込む方針だ。有用なワクチンを適切に接種することで制圧できる感染症に対し、谷間世代を生まない一貫性のある施策が求められる。


2018年10月05日金曜日


先頭に戻る