社説

五輪ボランティア/納得して参加できる環境を

 2020年東京五輪・パラリンピックの運営を支える「大会ボランティア」の募集開始から半月がたった。大会組織委員会が目標とする8万人に対し、5日時点で約3万2000人が応募済みで、手続き中の人を含めると約6万2000人になるという。
 どれだけの人員が集まるのか、不安視する向きがあっただけに、まずは順調な滑り出しと言っていいだろう。
 ボランティアは大会の成否の鍵を握るという。世界最大のスポーツの祭典に直接携われるのは、貴重な体験になるに違いない。12月上旬の締め切りまでには時間がある。東北から参加を考えている人もいるのではないか。
 一方で、今回の募集については、厳しい視線も向けられている。ネット上では「やりがい搾取」などの批判が見える。宿泊先の自己手配や東京までの交通費、宿泊費の自己負担など参加のハードルが高いからだ。
 確かに、宿泊場所の確保や費用を考えると、地方からの参加は容易ではない。組織委は活動場所への交通費として1日当たり1000円分のプリペイドカードの支給を決めたが、この額の妥当性についても議論が起きた。
 組織委は批判に耳を傾け、手軽に利用できる宿泊施設を確保するなど多くの人が参加しやすくなるよう、より工夫を凝らしてほしい。
 大会ボランティアは、案内、競技、式典、移動サポートなど9分野に大別される。活動するのは1日8時間の10日以上が基本だ。長期休暇が取得しにくい社会人にとっては参加条件が厳しい。
 さらに大会開催は7月下旬から9月上旬までと猛暑の時期と重なる。健康の面からも活動の時間や期間の条件に柔軟性を持たせるなど配慮が求められる。
 政府はボランティア参加を促すため、大学や企業に協力を要請したが、「学徒動員か」などの批判も招いた。ボランティアを半ば無理強いするようでは、ボランティア本来の趣旨から外れよう。
 批判の根底には、膨れ上がった大会予算への疑念とボランティアが安価な労働力と扱われているのではという懸念があるように思える。
 ボランティアはロンドン大会(12年)では約7万8000人、リオデジャネイロ大会(16年)は約5万人だった。東京大会は組織委とは別に宮城県、福島県などの開催地が募る「都市ボランティア」も合わせると11万人に上る。
 1兆3500億円もの巨費が投じられる東京大会は、東日本大震災からの「復興五輪」を開催理念に掲げる。その意義が国民に共有され、みんなで支えたい大会になっているのかどうか。
 組織委はそうした疑問に説明を尽くし、しっかり情報を発信してほしい。大会を支えたい人が納得して参加できる環境を整える必要がある。


2018年10月12日金曜日


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