社説

頓挫する原発輸出/「成長戦略」の夢はついえた

 安倍政権が「成長戦略」に位置付け、官民挙げて推進してきた原子力発電所の輸出がことごとくつまずいている。
 今月、三菱重工業がトルコとの間で進めてきた「シノップ原発」の建設計画が、断念の方向で検討に入ったことが明らかになった。さらに日立製作所が英国で計画していた原発も「凍結」になった。
 ベトナムやリトアニアでもこれまでに、計画撤回などに追い込まれている。原発の輸出ではないが、東芝が米国での原発事業に失敗し一時、経営危機に陥ったことも記憶に新しい。海外で本格的に原子力産業へ乗り出すことには、かなりの困難が伴うのではないか。
 そもそも東京電力福島第1原発事故の後始末にこれから何十年もかかるというのに、原発輸出に躍起となっているのは理解に苦しむ。日本国内で新規の建設・増設の見通しが立たず、メーカーは海外に活路を見いだそうとしてきたが、ほぼ全滅状態。
 成長戦略と原発輸出を結び付けるのは、最初から無理があったのではないか。
 シノップ原発の受注が決まったのは2013年だった。事業費2兆2000億円のプロジェクトだったが、福島第1原発事故の影響で安全対策費などがかさみ、当初の2倍以上の5兆円にもなる見通しになった。トルコが負担できるかどうか不透明になり、断念の方向になった。
 リトアニアの「ビサギナス原発」を巡っては、12年に建設の是非を問う国民投票が行われ、反対が過半数に達している。ベトナムでも福島第1原発事故前の10年に受注が決まっていたが、16年に計画が撤回された。
 日立製作所などが英国の中西部の島で計画中の原発(2基)は、建設費が当初の1.5倍の3兆円に膨らみ、採算性が課題になっていた。出資企業の確保や電力買い取り価格などの議論が続いていたが、実現は遠のいた。
 日本企業が関係した海外の原発建設計画の経過をたどると、安全対策などによる建設費の高騰が大きな障害になっている。事故回避のためのコストは必要だとしても、負担できないほどの額になれば、建設そのものを考え直すしかなくなる。
 原発といえども採算性は大事。福島第1原発事故後に必要になった原子力特有の安全対策費が建設費を押し上げ、世界中で競争力を失いつつあるのではないだろうか。
 安倍晋三首相は就任以来、原発輸出に前のめりの姿勢を続け、メーカーと歩調を合わせて各国への売り込みを図ってきた。だが実績は皆無で、これから上向く見通しも立たないだろう。
 原発輸出はいったん立ち止まって再検討すべきだ。原子力産業の海外展開に国の成長の一端を委ねることが、多くの国民の支持を得られる政策だとも思えない。


2018年12月18日火曜日


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