社説

あおり運転/根絶に向け取り組み強化を

 前の車に極端に接近する。パッシングをする。幅寄せや割り込みで車の進路を妨害する。社会問題化している「あおり運転」を厳しく戒めた判決を社会で共有したい。
 神奈川県の東名高速道路で昨年6月、あおり運転を受け停車した車にトラックが追突し、夫婦が死亡した事故の裁判員裁判。横浜地裁は、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪などに問われた被告の男に懲役18年の判決を言い渡した。
 被告は高速道のパーキングエリアで駐車方法を非難されて憤慨。夫婦ら一家が乗った車の進路をふさぐ運転を繰り返し、追い越し車線上に停車させ、追突事故を誘発、夫婦を死亡させるなどした。
 危険運転罪は、車を運転する行為が構成要件となっている。弁護側は停車後の事故には適用できないとして無罪を主張し、同罪の適用可否が焦点となった。判決は度重なるあおり運転と停車、その後の暴行を一連の行為として捉えて同罪の成立を認めた。
 高速道での意図的な停車が危険なのは明らかで、事故の経緯からみれば、自然な判断だろう。
 法律の条文がカバーしない悪質運転に対しては、これまでも重大な事故を契機に法改正が繰り返されてきた。今後は、停車禁止の場所に無理やり停止させる行為を危険運転の類型に加えるなどの法改正が検討されてもいい。
 あおり運転が取り返しのつかない結果を招いた今回の事故は、被告の悪質な行為からも社会的に関心を呼んだ。だが、その後もあおり運転やトラブルは後を絶たない。
 警察庁は今年1月、悪質で危険な運転に対してあらゆる法令を駆使して取り締まるよう全国の警察に指示。1〜10月のあおり運転関連の摘発は計1万件を超え、前年同期の倍となった。
 取り締まりとともに、あおり運転の根絶にはドライバーのマナー向上が欠かせない。日本自動車連盟(JAF)の調査では、運転中に後方からあおられた経験がある人は半数を超えている。警察は免許取得時の講習などさまざまな機会を通じ、ドライバーの自覚を促すよう啓発にも力を注いでほしい。
 悪質なドライバーに遭遇した際の自衛策として、今回の事故後、ドライブレコーダーを装着する人が増えたという。あおり運転への抑止効果となるに違いない。
 家族旅行の帰りに、10代の娘2人を残して命を奪われた夫婦の無念さ、遺族の悲しみは察するに余りある。長女は法廷に提出した意見書に、あおり運転への関心が高まった状況について「両親の死が無駄ではなかったことがせめてもの救いです」と記した。
 長女の言葉は重い。今回の事故を社会への問題提起と受け止め、法改正を含め、あおり運転の一掃を目指した取り組みの強化につなげたい。


2018年12月19日水曜日


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