社説

冷え込む被災地経済/中小零細企業対策に総力を

 東日本大震災の被災地で、地域経済の冷え込みが顕著になってきた。復興需要が衰え、再起を図る中小零細企業が息切れするケースが目立つ。震災から間もなく8年。被災地経済は転換点にある。
 沿岸部の基幹産業である水産加工業には停滞感が広がる。石巻市では11月以降、2社が倒産した。いずれも被災した中小企業を支援するグループ化補助金で工場を再建し、販路喪失と需要低迷で事業継続を断念した。うち1社は創業100年の老舗で、売り上げは震災前の30分の1まで落ち込んでいた。
 帝国データバンク仙台支店がまとめた法的整理による東北の11月の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は38件で、前年比81%増。今年の累計は同月で昨年分を上回った。夏に倒産が増えるなど不安定な現象が表れている。
 東京商工リサーチ東北支社によると、宮城県内の本年度上期の倒産件数は震災後最多となった。同支社は「復興需要が一巡し、事業構造を転換できず倒産するケースが徐々に増えている」と危惧する。
 グループ化補助金は震災後に創設され、岩手、宮城、福島の被災3県では約1万の企業に約4600億円が交付された。東北経済産業局が10月に発表した交付先アンケートによると、売り上げが「震災前の水準以上まで回復」と答えた企業は46%。水産・食品加工は3割にとどまった。
 震災で既存の顧客を失い、事業再開後は人手不足、原材料費の高騰という外的要因が追い打ちを掛ける。再スタートを切った事業者で経営が順調なのは、「一部」と言わざるを得ない。
 加えて、無利子貸し付けなど金融支援を受けた企業は今、借入金の据え置き期間が終わり返済が本格化している。倒産件数の増加と軌を一にしていることが、事態の深刻さをうかがわせる。
 企業倒産は震災後、小康状態が続いた。底支えをしたのは復興需要であり、補助金だった。国や自治体の復興計画の進捗率(しんちょくりつ)は100%に近づく。災害公営住宅、防災集団移転事業、防潮堤といった巨大な公共事業は出口が見えてきた。復興需要は既に終わったと見た方がいいだろう。
 国内景気は来年1月まで回復が続けば、戦後最長を更新する。一方で中国経済の後退や米中貿易摩擦など、国内経済を支えてきた外需は減速リスクが増している。景気後退の影響は弱者から及ぶのは世の常だ。
 沿岸部では、地域経済が震災前の水準に戻ったと悲観する声が聞かれる。現状を見ると、既存の支援制度は多様化、複雑化する課題に対応し切れていないのではないか。資金需要が増す時期である。被災地経済の担い手である中小零細企業を持続させるためにも、金融、政策双方で官民の総力を挙げた対応が求められている。


2018年12月31日月曜日


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