社説

景気の行方/募る減速感 突破へ正念場

 高額の福袋がそれなりに売れ、にぎわうのは都市部の大型店だけだ。地方の多くの商店街は寒々として近隣の客を待つ。今年もそんな低成長時代の初売り風景であろう。
 昨年末、東京株式市場で日経平均株価が急落し一時、2万円を大きく割り込んだ。米国市場の暴落のあおりとはいえ、日本株はあまりに脆(もろ)い。
 それでも政府は「今も景気回復の局面にある」「実体経済は底堅い」と言い続ける。
 多くの人は実感がないのではないか。収入が大きく増えていないからだ。人手不足なのに実質賃金が伸びないのはひとえに生産性の問題だ。
 人にも設備にも投資せず、低賃金の非正規社員でしのぎ資金は手元に置いておく。早晩やって来る不景気に備えてのことだろう。株安は、そんな経営者心理を一層冷やす。
 第2次安倍政権発足から6年。政府はデフレ脱却を唱え続けたが、物価上昇率2%の目標は達成されない。それだけでも「アベノミクス」の成否は問われるべきである。
 日銀による異次元緩和が円安・株高の流れをつくり、確かに企業の収益力は改善した。半面、利ざやで稼ぐ地方銀行などを苦しめている。
 長期にわたる超低金利政策は貿易上の利益を狙った通貨安誘導とみなされ、米国がやり玉に挙げている。手詰まり感は徐々に強まってきた。
 再開される日米間の通商協議、米中貿易摩擦の影響など重苦しい海外リスクを含め、今年は不安要因が一気に降りかかってくる可能性がある。
 予想を超える速さで訪れた年末株安が、景気減退の予兆であるとするなら連鎖の芽を摘む備えも必要になろう。
 今秋実施される消費税増税が最大のヤマ場だ。景気への影響を抑え込む目的で、なりふり構わず並べ立てた2兆円規模の経済対策は効くのか。ばらまきや時流に迎合するキャッシュバック策が多く、公平性に欠けるのが気になる。
 増税の本来の目的である財政健全化や、社会保障制度の本格的議論がなおざりにされていないか。国民の将来不安の最大の元凶はそこにある。
 政府は先月、2019年度の成長率見通しを1.3%と修正した。甘い見立てには希望値が含まれる。米国の市況に依存しない内需型の経済、持続的成長が見込める新しい産業社会への道は遠い。
 しかし、逆風におびえ挑戦をやめれば、経済は縮小するだけだ。4月には外国人労働者が入ってくる。制度は欠陥だらけだが、この機を捉え体質改善に結び付けたい。過渡期であればこそ、弱気にならずに稼ぐ力を高めるべきだ。
 春闘も転換点にある。経団連は政府の賃上げ要請を疑問視し「労使交渉で決めること」と明快だ。数値でなく、生産性向上や処遇改善を重視する。意味のある賃上げは現状突破につながろう。産業界と働く人々が、共に景気回復の支柱を担ってほしい。


2019年01月03日木曜日


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