社説

あす「成人の日」/未来の扉はその手で開こう

 あす14日は成人の日。東北の多くの自治体ではきょう、成人式が行われる。東北6県では、約8万9700人が大人の仲間入りをした。新たな一歩を踏み出した新成人のみなさん、おめでとう。
 思い起こすのはやはり、あなたたちが小学校を卒業した2011年3月、東北を襲った東日本大震災だ。卒業式が満足にできない小学校があった。多くの中学校では、4月の入学式が順延された。
 中学時代を仮設校舎で過ごした人、友人と離れ離れになった人もいるだろう。親を亡くした震災遺児もいる。震災のさまざまな傷を背負ってきた人が少なくない。
 東京電力福島第1原発事故で古里を追われ、新たな地で再出発した人もいるだろう。震災を直接体験していない人も含め、8万9700通りの20年を歩んできた。
 歩みの途中で残念ながら前途が絶たれ、成人式を迎えられなかった仲間もいる。宮城県沿岸部に住む男性教員(52)は震災の津波で、長女=当時(12)=を亡くした。小学校の卒業式を1週間後に控えていた長女は、将来、教師になるのが夢だった。
 「娘の分も生きる」。教員の父親は震災後しばらく、そう気負っていた。悲しみを抱えながら、いつも難しい顔をして暮らしていたが、ある時ふと思ったという。
 しかめっ面で生きていて、天国の娘が笑顔になるのだろうか。人の人生じゃなく、残された私たちが自分の人生を自分らしく生きる。顔を上げて生きてこそ、娘も笑顔になれるのではないか−。
 顔を上げて自分らしく生きる。この教員の思いを新成人へのメッセージとして贈りたい。将来の展望がなかなか描きにくい時代だ。だからこそ、未来の扉は自らの手で開く意思を持ち、それぞれの幸せをつかんでほしい。
 ただ、新成人がこぎ出す社会には多くの困難が待ち受けている。
 日本は人口が次第に減少する一方で、「人生100歳」時代を迎える。若者の数は激減し、若い世代への負担はますます重くなる。
 首都直下地震や南海トラフ巨大地震はいずれ、この列島を襲うだろう。今に生きる私たちは、これまでの教訓を次世代につなぐ使命を負う。
 貧富の格差が拡大し、分断と対立をあおる言動は深刻さを増している。人工知能(AI)などの情報革命は歴史的な転換を社会にもたらすだろう。そうした中で目標や希望を抱き、自分らしく生きるには、自ら行動して考え、歩く道を判断するほかない。
 「18歳選挙権」は既に導入された。今年実施される地方統一選、参院選ではぜひ、若者の声を政治に届けてほしい。地域や国の将来に向き合うことは、自分の未来を考えることにもつながるだろう。
 一人一人の選択がより良い社会を築く礎となる。


2019年01月13日日曜日


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